2019 Fiscal Year Research-status Report
膵液中エクソソームによる膵癌進展機序の解明と新規診断法の開発
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19K17420
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
滝川 哲也 東北大学, 大学病院, 特任助手 (70836882)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エクソソーム / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの膵癌におけるエクソソーム研究は血液検体を主に対象としており、特異性の点から課題があると考えられている。そこで、本研究では膵液中の膵癌特異的なエクソソームに着目し、膵癌進展への関与を明らかにするとともに膵液中エクソソームを用いた膵癌早期診断への応用を目的としている。 本年度はまずマウスとヒトの膵液から超遠心法によりエクソソーム単離を試みたが、収量が非常に少なく安定的に採取・解析することが困難であった。 そのため、近年確立されたオルガノイド培養技術を用いて膵癌特異的なエクソソームを採取する方法を試みた。そして、膵癌患者から内視鏡的に採取した膵癌組織と膵液からオルガノイド培養を行い、膵癌患者由来オルガノイドを作成することに成功した。オルガノイドから作成した組織標本で異型細胞を確認し、DNAを抽出しサンガーシークエンス法で膵癌細胞でほぼ必発であるKRAS変異を認め、培養したオルガノイドが膵癌細胞由来であることも確認した。オルガノイド培養は従来の癌細胞株と同様に継代・保存ができるため、繰り返しエクソソームを採取でき、さらに患者由来オルガノイドを用いた機能解析や薬剤感受性試験を行うことできる点に意義があると考えている。 またヒト血清からもエクソソーム単離を行っており、現在までに膵癌症例20例、総胆管結石や慢性膵炎など良性疾患症例11例からエクソソームを採取した。膵癌細胞由来オルガノイドの培養上清から単離した膵癌特異的エクソソームと、miRNAやタンパク発現プロファイルの相違について今後検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵液から安定して十分量のエクソソームを単離することが困難であり、患者由来オルガノイド培養の確立から実験を行う必要があったため実験はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌患者由来オルガノイドを作成することができたため、培養上清から膵癌特異的なエクソソームを単離し、さらにトータルRNAとタンパクを抽出してマイクロアレイや二次元電気泳動法による網羅的解析を行う予定である。バイオマーカー候補を同定できれば、エクソソームを介する膵癌進展機構の解明や、実際の臨床経過における治療反応性や生存期間と関連するか明らかにする。またヒト血清エクソソームとのプロファイリングの相違を検討していく。同時に引き続き膵液中エクソソームの単離を、新しい手法を取り入れつつ行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
膵液から安定してエクソソームを単離することができず、予定していた実験(miRNAやタンパク発現の網羅的解析など)を遂行できていないことが次年度使用額が生じた理由である。今後はオルガノイドとヒト血清から採取したエクソソームを用いての実験を計画しており、当該助成金を使用する予定である。
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