2019 Fiscal Year Research-status Report
免疫組織・分子生物学手法による十二指腸上皮性腫瘍のバイオマーカー探索
Project/Area Number |
19K17423
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
皆月 ちひろ 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10800740)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 十二指腸上皮性腫瘍 / 網羅的遺伝子発現解析 / 免疫組織学的染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、十二指腸上皮性腫瘍の免疫組織学的解析を行い、臨床に還元可能な免疫組織学的所見の同定を目指すことと、十二指腸上皮性腫瘍のコード遺伝子・非コード遺伝子の網羅的発現解析を行い、発症・促進の分子機序の解明することである。 まず、一つ目の目標に関しては、東京大学医学部付属病院並びに関連施設において内視鏡的に切除された十二指腸上皮性腫瘍の組織標本を用いて癌マーカー、消化管分化マーカーの免疫染色を行い、十二指腸上皮性腫瘍の臨床的特徴や背景因子との比較を行った。我々は既に内視鏡的に切除された検体において、消化管分化マーカーのうち、腸型マーカーを発現する腫瘍は悪性度が低く、胃型マーカーを発現する腫瘍は悪性度が高い可能性について発表している。同様の傾向が内視鏡切除の対象となる病変に限らず、外科的切除の対象となるような進行癌でも観察可能かどうかについての検討を行った。結果的には、進行癌でも消化管分化マーカーの発現は同様の傾向を示したが、さらに悪性度が高くなると、消化管分化マーカーの発現が低下する傾向もみられ、新たな知見と考えられた。症例数を増やし、転移や浸潤の傾向と分化マーカーの発現の傾向が一致すれば、重要な予後因子として臨床に還元可能であると考える。 次に、二つ目の目標に関して、腫瘍部と非腫瘍部それぞれの生検1回分の組織検体から全RNA抽出を行い、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。十二指腸上皮性腫瘍において発現が低下、あるいは上昇している候補遺伝子群を同定し、腫瘍部と非腫瘍部において、マーカーとして重要と考えられる遺伝子群を同定するべくクラスター解析を行った。その結果、腫瘍部と非腫瘍部で発現する遺伝子群が明瞭に分かれた。さらに発現差が大きい遺伝子を同定し、候補遺伝子については抗体を作成し、臨床検体においてその有用性について検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
十二指腸上皮性腫瘍の組織標本については、必要な免疫染色の抗体を選定し、内視鏡切除の対象となる早期十二指腸癌もしくは十二指腸腺腫においての免疫染色だけでなく、外科的切除の対象となる進行十二指腸癌における免疫染色を行い、早期十二指腸腫瘍の免疫組織学的特徴との類似点や相違点の解析を行い、結果については論文投稿予定である。1年間で、進行癌検体の免疫染色を行ってその解析を行い、結果をまとめることができそうなので、概ね順調に経過していると考えている。 網羅的な遺伝子発現解析に関しては、まず生検1回分の組織検体からの全RNA抽出の系を確立し、組織採取に適切な症例を検討した上で、まずは4症例の腫瘍部・非腫瘍部からRNA抽出を行った。腫瘍部と非腫瘍部において、マーカーとして重要と考えられる遺伝子群を同定するべくクラスター解析を行い、腫瘍部と非腫瘍部で明瞭に遺伝子群が分かれることがわかった。1年間で組織検体からのRNA抽出の系を確立できたこと、また、その網羅的遺伝子発現解析を行い、遺伝子群が分かれることが確認できたので、こちらも概ね順調に経過していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
十二指腸上皮性腫瘍の免疫組織学的検討については、症例数を増やしても現在までの発現低下・もしくは上昇と同様の傾向が見られるかを確認する。特に、進行癌を含めた検討で見られた消化管マーカーの発現低下については、今まで他に発表されたことのない知見なので、更なる検討を行う予定である。 遺伝子発現解析については、腫瘍部と非腫瘍部で発現が分かれた遺伝子群の中で、発現差が大きい遺伝子を同定する。候補遺伝子については抗体を作成し、臨床検体においてその有用性について検討する予定である。有用な遺伝子が見つかれば、今後の診断や治療の一助となるため臨床上大きく貢献可能となる。
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Causes of Carryover |
2019年度に網羅的遺伝子解析を行いその結果を学会発表予定だったが、検体採取からRNA抽出を行って解析するまでの過程に時間を要しており、実際に解析した症例数が少ないことから、計画を変更し、症例数を追加して解析することとしたため、未使用額が生じた。このため、追加した検体の解析と発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとした。
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