2019 Fiscal Year Research-status Report
The role of alternative-autophagy related proteins in pathophysiology of colitis .
Project/Area Number |
19K17426
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
仁部 洋一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (30793351)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 腸炎 / ユビキチン修飾 / 新規オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーは、細胞内構成成分をバルクに分解する機構と考えられてきたが、最近の研究では、より選択的に基質を標識し分解する精緻な機序が明らかとなってきている。新規オートファジーは、従来知られていたオートファジーの分子機構とは全く異なる、細胞内成分の分解機構である。当研究室においては、新規オートファジーに関連するユビキチンリガーゼTRIM31を同定しており、この分子の腸管上皮における機能解析を行った。 まず、新規オートファジーで分解される基質の標識分子として、ユビキチンが関係していることを確認した。新規オートファジーで分解される基質を免疫沈降し、Western Blotで解析すると、ユビキチン鎖が結合していることが観察された。また、ユビキチン鎖を認識し、オートファジーへ誘導するアダプター分子候補Xを同定した。 次に、当研究室で樹立したTrim31欠損マウスにおいて、DSS腸炎が増悪することを確認した。さらに、Trim31欠損マウスから、小腸上皮オルガノイドを作成し、種々のPathwayの異常を検討した。結果的に、LPS刺激下でのIkbαの分解遅延が示唆された。この経路において、Trim31でユビキチン化され、新規オートファジーで分解される分子の蓄積が、腸炎の病態形成に関与している可能性が考えられた。 さらに、申請者らの研究室で開発したオートファジーを染色する化合物を用い、Live imagingによる腸管上皮オルガノイドのオートファジー観察系を創出した。これを利用して、Trim31欠損小腸オルガノイドを解析すると、オートファジーの異常が示された。 以上の結果から、DSS腸炎の増悪メカニズムとして、ユビキチンリガーゼTrim31の機能不全による、新規オートファジーの異常と、分解されるべき基質の蓄積が関与する可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書においては、2019年度の予定として、① Trim31欠損マウスで新規オートファジーに異常があるか検討する ② Trim31でユビキチン化され新規オートファジーで分解される基質と関連するアダプター 分子を同定する、の2点を記載している。 ①に関しては、いままでのオートファジーの解析系とは違う、オルガノイドと新規オートファジー可視化化合物を用いたイメージング系を創出した。これを用いて、Trim31欠損マウスにおけるオートファジーの異常を示すことができた。一方で、DSS腸炎に相当する最適な刺激因子やその濃度は確立していない。現時点では、腸管上皮オルガノイドに関する、定常状態とLPSやTNFなどの、単一の刺激によるオートファジーの解析にとどまっている。 ②に関しては、既知の新規オートファジーによって分解される基質を免疫沈降し、アダプター分子を絞り込むことができた。続いて、新規オートファジーによって分解される基質に特異的なユビキチン鎖の同定を進めた。このユビキチン鎖の同定には、各種ユビキチンの変異体や、申請者が以前報告した独自のユビキチン鎖の可視化系を用いての解析を行った。この特異的なユビキチン鎖と、アダプター分子候補Xとの結合も確認できている。以上のように、アダプター分子の同定に関しては、予定以上の進行が得られている。 上述の①②に関するこれまでの解析結果から総合すると、申請書において当初予定していた2019年度の進展に関しては、おおむね順調に進展していることを、自己評価可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、Trim31を欠損した場合に、新規オートファジーが異常となり、蓄積してしまう基質を同定する必要がある。このために、効率的にTrim31の基質を結合し、質量分析に供する系が必要となる。現在、ユビキチン鎖およびTrim31の基質に効率的に結合し、免疫沈降する系を、北海道大学 大学院医学研究院生理系部門 生化学分野と共同で作成し、安定して発現する細胞株を構築中である。この系から得られた基質を質量分析によって同定する。また、同定された基質が、Trim31欠損マウスのDSS腸炎モデルにおいて蓄積しているかを解析する。 基質を同定したのち、蓄積基質を欠損したマウスとTrim31欠損マウスを交配し、DSS腸炎の病勢が改善するかを解析する。また、基質の関連する経路を阻害する薬剤や、新規オートファジーを誘導する薬剤で基質を除去することで、腸炎の病勢を解析する。腸炎の病勢が改善すれば この基質が有用な創薬対象となることを示唆する。 加えて、ヒト炎症性腸疾患の臨床検体を用いて、基質の蓄積を調べる。様々な背景の炎症性腸疾患患者の臨床検体で基質がどのように発現しているか、正常部位・病 変部位ともに免疫染色し観察する。基質として同定されたタンパク質が、GWASにリストアップ されたタンパク質であれば、発症との関与が疑われる。炎症が強い症例の検体や、生物学的製 剤無効例の検体などで強く発現するのであれば、増悪への関与が疑われる。 以上のように、まずは基質の同定を行い、その基質がどのように腸炎の病態形成に関与しているか、解析を展開する。
|