2019 Fiscal Year Research-status Report
インテグリン阻害剤を応用した新たな肝線維症治療薬の開発
Project/Area Number |
19K17428
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
則武 秀尚 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10467235)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インテグリン / 肝星細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)における新たな抗線維化治療薬の創出を目標として,初年度はまずRGDインテグリン阻害剤(CWHM-12)が肝星細胞(HSCs)に与える直接的作用をin vitroで検証した.代表的な不死化ヒト肝星細胞(HSCs)であるLX2細胞を用いて,細胞培養液中にRGDインテグリン阻害剤であるCWHM-12を添加して細胞の増殖および生存率を検証した.この結果,CWHM-12の添加により濃度依存性に細胞の増殖が抑制され,生存率も低下した.またフローサイトメーターによる解析にて,この現象がアポトーシスによるのであることが明らかとなった.すなわちHSCsに対してRGDインテグリン阻害剤が直接的にアポトーシスを誘導することが示唆され,既報のin vivoの実験結果を裏付ける結果となった.続いてRT-PCRおよびウエスタンブロット法にてCWHM-12を添加したことによる細胞内蛋白発現レベルの変化を検証した.その結果RGDインテグリン細胞内ドメインに結合するFocal adhesion kinase(FAK)のリン酸化が抑制され,下流のAKTのリン酸化も抑制されることが判明した.AKTは細胞生存,細胞周期,抗アポトーシスに関わる非常な重要な分子であることから,HSCsに対するRGDインテグリン阻害剤の直接的作用はFAKを通じたAKTリン酸化抑制によってもたらされると考えられた.そこでCWHM-12を添加したLX2細胞の細胞周期分布をフローサイトメトリーで解析したところ濃度依存性にG1期の細胞が増加することが判明した.このことからRGDインテグリン阻害によりG1静止が誘発され,これが細胞増殖を抑制する原因と考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回は新規に実験を開始したこともありセットアップに準備に時間を要し,当初計画した初年度の実験内容のうち2/3程度の進捗状況であるが,事前に予想された結果に概ね合致する結果が得られていることから比較的順調に進んでいると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上記のLX2細胞株を用いて得られた実験結果について,その他の細胞株およびNASHモデルマウスから採取した初代HSCsを用いて再度,RGDインテグリンを介した細胞生存,増殖アポトーシスに関するOutside-in signalの検証を行う予定である.このため他のヒト不死化HSCs株であるLI90とNASHモデルマウスから採取した初代HSCsを新たに使用する.IL90細胞株はJCRB細胞バンクより譲与を依頼し,NASHモデルマウスの作成は生後6週のC57BL/6マウス(オス)にCDAHFDを6週間与えて作成する. またRGDインテグリン阻害剤がNK細胞の細胞障害性に与える影響についての検証も開始する.当初はヒトNK細胞株であるNK3.3細胞を米国から譲与してもらう予定であったが,昨今のCOVID-19ウイルス感染流行に伴い米国からの譲与手続きを進めることが困難となったこともあり当初の計画を一部変更し,通常および上述のNASHモデルマウスからHSCsと末梢血NK細胞を採取して実験に使用する予定である.更にここで得られた結果をもとにヒトから採取した末梢血NK細胞とHSCs細胞株を用いて,NK細胞のHSCsに対する細胞障害性とCWHM-12が与える影響を調べる計画である.
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Causes of Carryover |
前述の理由により当初予定していた実験計画からやや遅れがあるため,使用した研究費も当初の予算より少ない金額となった.
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