2019 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病随伴膵癌の発癌機序解明および早期診断マーカー同定
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19K17431
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 克彦 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (40838843)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵癌 / バイオマーカー / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌と糖尿病の関連性は以前より報告されてきた。本研究では、高血糖と膵癌の関連因子を解析し、糖尿病併存膵癌の発生機序を解明すると同時に、早期発見の診断マーカーの探索を目的とする。 我々の研究室では、膵特異的Kras変異モデルマウス(Pdx1-Cre Kras LSLG12Dマウス)にストレプトゾトシンを投与することで、1型糖尿病様の高血糖、低インスリン状態を呈した膵発癌モデルマウスを作成した。同マウスでは、ストレプトゾトシン非投与群と比して、膵前癌病変であるPanIN形成が促進していることを確認したが、そのメカニズムについては言及できていなかった。細胞実験においては、4週間以上high glucose培地で培養したPANC1がlow glucose培地で培養した細胞と比べて細胞増殖能とスフィア形成能が増強していたが、その再現性を、Kras野生型ヒト膵癌細胞株であるBxPC3、マウスより作成したKras変異型マウス膵癌細胞株mPKC1で確認した。変異型Krasを有するPANC1、mPKC1ではともに細胞増殖とスフィア形成が促進されたが、Kras野生型株であるBxPC3ではその変化が確認できなかった。上記より、high glucoseにおける細胞増殖やスフィア形成の変化にはKras変異が必要な可能性が示唆された。また膵癌発育進展に関わる因子の蛋白発現を確認すると、pSTAT3とMYCの発現の増強を認めた。ストレプトゾトシンで高血糖を誘導した膵発癌モデルマウスにおいても、PanIN内のpSTAT3およびMYC発現が正常血糖のマウスと比べて増強していた。上記より、高血糖下での膵発癌進展にSTAT3とMYCが関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵癌と糖尿病の関連性および早期診断マーカーの発見を目的とし下記実験を行った。 平成31年度(令和1年度)には、high glucoseで4週間以上培養したPANC1で確認された細胞増殖能とスフィア形成能の増強の再現性を、Kras野生型ヒト膵癌細胞株であるBxPC3、マウスより作成したKras変異型マウス膵癌細胞株mPKC1で確認を行った。結果、Kras変異型株であるPANC1、mPKC1ではともに細胞増殖能と腫瘍形成能が亢進したが、Kras野生型株であるBxPC3ではその変化が確認できなかった。上記より、high glucoseにおける細胞の変化はKras変異に依存している可能性が示唆された。またPanIN進展に関連する分子として、細胞増殖と関連するERK、AKT、STAT3を、スフィア形成能の評価として、nanog, MYC, ZEB1等を評価したところ、pSTAT3とMYCのは発現が増強していた。ストレプトゾトシンを膵発癌モデルマウスに投与することで作成した高血糖膵発癌マウスにおいても、PanIN内のpSTAT3およびMYC発現が正常血糖のマウスと比べて増強していた。上記より、高血糖下での膵発癌進展にSTAT3とMYCが関連している可能性がある。 新規マーカー検索においては、高血糖で培養したmPKC1でシナプトフィジン発現増強に伴う神経内分泌機能の獲得は確認できず、別の方法を検討している。 上記のように概ね順調に研究は進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
高血糖が膵発癌を進展する機序については、高血糖がKras変異を伴う膵癌および膵前癌病変において、STAT3のリン酸化およびMYC発現上昇を介して、腫瘍進展を促進する可能性が確認された。今後は、より膵発癌進展が速い当研究室が保有するPdx1-Cre Kras LSLG12DマTrp53 fl/fl マウスにストレㇷ゚トゾトシンを投与し、進行癌における高血糖の影響を評価する。またマウスより作成したmPKC1はBL6/Jマウスにおいて腫瘍形成することが確認できており、ストレプトゾトシンを投与したBL6/Jマウスおよび投与していないBL6/Jマウスの膵尾部にmPKC1を同所移植することで高血糖が膵進行癌に与える影響を評価する。新規マーカー探索においては、mPKC1ではシナプトフィジンが増強しなかったことを考慮し、別方法を検討する。高脂肪食を摂取させたBl6/Jマウスは肥満を伴う2型糖尿病に類似したマウスモデルである。5-15週齢まで10週間高脂肪食を投与したBL/6Jマウスの膵尾部にmPKC1を同所移植した結果、通常食のマウスと比較して、腫瘍がより大きくなること、また予後が短くなることを確認した。また高脂肪食の肥満マウスでは性腺周囲脂肪全体重比が膵癌の植え込み後3週間で減少するが、通常食のマウスでは有意な脂肪の減少を認めなかった。この点を鑑み、体内で最大の内分泌臓器である脂肪が分泌する新規マーカーについて検討を行うべく、RNA seqなどで網羅的解析を行う。
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