2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K17432
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
牧野 祐紀 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60771334)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肝発癌 / p53 / 肝前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Mdm2欠損Kras変異肝発癌モデル(KrasLSL-G12D/+ Mdm2 fl/fl AlbCre)において、p53の活性化に伴う肝障害の機序について検討を行った。同マウスでは、Mdm2野生型Kras変異肝発癌モデル(KrasLSL-G12D/+ Mdm2 +/+ AlbCre)に比し血清caspase 3/7活性が上昇し、TUNEL染色陽性肝細胞の増加を認めたことから、肝細胞アポトーシスの亢進が示唆された。また同マウスではβ-galactosidase陽性肝細胞が増加し、肝細胞の炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、Ccl2)産生が増加していたことから、肝細胞の細胞老化およびsenescence-associated secretary phenotype (SASP)の亢進が示唆された。以上の結果から、Mdm2欠損Kras変異肝発癌モデルにおける肝障害は、肝細胞におけるアポトーシスおよびSASPの亢進が一因であることが示唆された。 さらに同マウスにおける肝前駆細胞の存在について検討した。同マウスの背景肝では肝前駆細胞マーカー(AFP, CD133, CK7/19)の発現が上昇しており、免疫染色にて同マーカーを発現する肝前駆細胞の存在を認めた。同マウスに形成された肝腫瘍は、肝前駆細胞から広がるように形成されており、肝前駆細胞が腫瘍の発生母地である可能性が示唆された。 Kras変異肝発癌モデルにおいて、Mdm2の欠損により認められるこれらの現象は、Mdm2に加えてp53も欠損させることにより(KrasLSL-G12D/+ Mdm2 fl/fl p53 fl/fl AlbCre)消失したことから、肝細胞におけるp53の活性化が原因であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討により、肝細胞におけるp53活性化による肝障害の原因を明らかにすることができた。また肝障害に伴い肝前駆細胞が出現していることも明らかとなっており、モデルマウスを用いた検討として計画している内容は順調に達成できていると考えられる。今後これらの結果をもとに細胞株や臨床検体を用いた検討を加えていくことにより、本研究課題の研究計画をおおむね達成できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
Mdm2欠損Kras変異肝発癌モデルにおいて、肝前駆細胞が腫瘍の発生母地であるとする仮説のもと、同マウスより肝前駆細胞を単離し、免疫不全マウスに移植することによりその腫瘍形成能について評価する。また同マウスに対し肝前駆細胞の阻害作用を有する非環式レチノイドを投与し、腫瘍抑制効果について検討する。 腫瘍形成能を有さないことの知られる肝前駆細胞株WB-F344に対し、SASP因子の長期刺激を行い、腫瘍形成能を獲得するか否かを検討し、SASPと肝前駆細胞の腫瘍形成との関連について検討する。 臨床検体を用いて、慢性肝疾患患者における肝細胞p53活性化の実態について、p53免疫染色により検討する。またp53下流遺伝子であるp21の発現量とALT値・アポトーシス・細胞老化・肝前駆細胞マーカーとの関連について検討する。
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