2023 Fiscal Year Research-status Report
膵癌に対する鉄キレート剤を用いた抗癌剤感受性向上と浸潤・転移抑制機構の基礎研究
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19K17434
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
篠田 崇平 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (00837693)
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Project Period (FY) |
2021-11-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膵癌 / FABP / FABP4 / FABP5 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度の研究実績で報告したように、膵癌と脂質代謝に着目した基礎的検討を行っており、特にFatty acid binding protein(FABP) 4が膵癌細胞増殖に関与していること、その阻害薬であるHTS01037が膵癌細胞増殖を抑制することを確認し、第54回日本膵臓学会大会(2023.07.21.16:10-18:10. 福岡国際会議場 第5会場)ワークショップ6「臨床応用を見据えた膵臓基礎研究」で発表を行った。そこでの議論を基に、現在論文投稿の準備を行っている。 また、FABP4だけでなく、脂肪細胞などが分泌するFABP5が膵癌細胞増殖にどのような影響を与えるかについて解析を行っており、ヒト膵癌細胞株であるMiaPaca2やマウス膵癌細胞株であるKPC cellを用いてin vitroでの検討を行ったところ、FABP5投与群では有意に膵癌細胞増殖が亢進することを確認した。そして、マウス膵癌皮下移植腫瘍モデルにおいてFABP阻害薬であるBMS309403投与群(BMS群)は有意に腫瘍増殖を抑制することを確認した。しかし、FABPとその阻害薬がどのように膵癌増殖に影響しているのか、具体的な機序は不明な点が多い。近年では膵臓の脂肪沈着が膵癌発癌率に関与しているという報告も見られることから、肥満、脂肪細胞、FABPと膵癌の関係性を明らかにするために、我々は高脂肪食(HFD)を摂取させるマウス膵臓高度脂肪沈着モデル作成し、HFD群では有意に膵臓脂肪沈着が高度でmRNAレベルでFABP5発現が高いことを確認した。現在mRNAレベルでのさらなる解析を行っている。 また、本研究課題とはやや異なるが、ミネソタ大学留学中に取り組んだ膵癌に対するIFN-alpha発現腫瘍溶解性アデノウイルス+化学放射線療法の基礎的検討について論文報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画である鉄キレート剤を用いた基礎的研究だけでなく、膵癌と脂質代謝、特にFABPに着目した基礎的検討は順調に進んでおり、現在FABP阻害薬であるHTSが膵癌細胞増殖を抑制することについて学会発表を行い、それらについて現在論文投稿を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄キレート剤が脂質代謝やFABPに及ぼす影響を解析し、転移抑制効果の評価を行う。 また、膵癌と脂質代謝、特にFABPに着目した基礎的検討で良好な研究成果が得られていることから、高脂肪食を与えたマウス膵臓高度脂肪沈着モデルでの高度脂肪沈着膵同所移植腫瘍マウスモデル群(HFD群)を用いて、鉄キレート剤、FABP阻害薬BMS309403を投与することで腫瘍増殖にどのように影響を与えるのかを解析し、得られた血液、病理組織検体を用いてmRNAやたんぱくレベルでの解析を行う。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入価格が当初と異なっていたため、次年度使用額が生じたが、基本的には計画通りに研究業務を遂行できている。翌年度分として請求した助成金は消耗品(精製たんぱく)に使用する予定である。
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