2019 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞癌におけるヒストンメチル化酵素G9aのエピジェネティックな制御機構の解明
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19K17447
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Research Institution | National Hospital Organization Chiba-East-Hospital |
Principal Investigator |
横山 昌幸 独立行政法人国立病院機構(千葉東病院臨床研究部), その他部局等, 消化器内科医師 (20834831)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 肝細胞癌 / G9a / p21 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストンH3K9に対するメチル化酵素G9aは、H3K9のジメチル化を介してその領域の遺伝子を転写抑制する。G9aは様々な癌腫において過剰発現していることが示されており、我々はこれまでに肝細胞癌においてもG9aが過剰発現しており、肝癌細胞の増殖と関連していることを報告した。それを踏まえて本研究では肝細胞癌(HCC)におけるG9aの役割およびH3K9me2修飾の意義を解明し、治療標的としての有用性を検証することを目的に研究を実施している。 今年度の具体的な実績として、はじめにHCCにおいてのG9a標的遺伝子の検討として次世代シークエンサーを用いた網羅的解析を実施した。具体的には、short hairpin RNA(shRNA)を用いてG9aをノックダウンしたHuh7細胞のstable株を作成し、ChIP-sequence (ChIP-seq)およびRNA-sequence(RNA-seq)を実施し、両者の統合解析によりG9aの標的候補として96遺伝子を同定した。 次に、その中でp21/WAF1CIP1に特に着目し、p21の転写へのG9aの直接的な関与を調べた。具体的にはG9aの阻害剤であるBIX-01294にて処理をしてG9aの発現を低下させた肝癌培養細胞に対して、H3K9me2抗体によりChIPを実施した検体とBIX-01294で処理をしないコントロールの間でp21の発現量をChIP-PCRにて解析したが、両者で有意な差は認められなかった。 また、シークエンス解析によりG9aの標的候補の1つとして同定された、p21とG9aの発現量の相関について、実際に当院で施行された肝細胞癌手術検体を用いた検討を開始した。手術検体に対しての免疫染色の実施および、患者背景の臨床学的データの収集を進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究当初に挙げた目的の内、まず肝細胞癌におけるG9aの標的遺伝子の検討については、次世代シークエンサーを用いての網羅的な解析を実施し、候補となる遺伝子は特定できたものの、その後のp21に絞っての解析(ChIP-PCR)については想定していた結果が得られず、予定よりはやや遅れていると評価する。 また、G9aとp21の臨床検体における発現とその臨床背景の検証については現在検体およびデータ収集を実施しており、おおむね予定通り進行していると考える。 次に予定していた、G9aの機能阻害によるp21の脱抑制の過程におけるヒストンアセチル化の意義の検証として、BIX-01294処理した肝癌培養細胞についてヒストンメチル化抗体(anti-H3K9me2)と同時にヒストンアセチル化抗体(anti-H3K9ac)でそれぞれChIP-seqを実施しており、概ね予定通り進行している。 最後に、HDAC阻害剤とG9a阻害剤(BIX01294)の併用療法の有用性の検討として、上記のp21とG9aの関係の解明ののちにその結果も踏まえ検討したいと考えており、まだ着手できていない状態である。今年度中には開始できるように研究を進行していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、p21の転写へのG9aの直接的な関与を解明するために研究を継続する。具体的にはG9aの阻害剤であるBIX-01294にて処理をしてG9aの発現を低下させた肝癌培養細胞に対して、H3K9me2抗体によりChIPを実施した検体とBIX-01294で処理をしないコントロールの間でp21の発現量をChIP-PCRにて解析する。現時点では仮説通りの結果は得られていないが、primerの再設計や阻害剤でg9aを抑制するのでは無く、sh-RNAを用いてg9aをノックダウンした細胞を用いて再度実験を実施したい。 また、シークエンス解析によりG9aの標的候補の1つとして同定された、p21とG9aの発現量の相関について、実際に当院で施行された肝細胞癌手術検体を用いた検討を開始しており、手術検体に対しての免疫染色の実施および、患者背景の臨床学的データの収集および解析を実施する方針。 最後に、HDAC阻害剤とG9a阻害剤(BIX01294)の併用療法の有用性の検討としてHDAC阻害剤はp21活性を上昇させるとの報告があり、このことを前項でのアセチル化の意義の検討で再度検証したい。また、G9a阻害剤とHDAC阻害剤は現在までの研究成果から考察すると、p21を活性化させるという点での一種のSynergy効果が期待されると考える。このことを実際にHCCの細胞レベルやマウスレベルで検証する方針。
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Causes of Carryover |
研究に少々遅れが生じ、研究費を計画通りに使用できなかった。 計画の遅れを取り戻すよう再調整し、研究費の効率的な使用を目指す。
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