2020 Fiscal Year Research-status Report
歯髄幹細胞産生因子による腸肝臓器相関に着目した新規NASH治療法の開発
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19K17457
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 隆徳 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (00827389)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NASH / SHED-CM / マクロファージ / 腸管透過性 / 腸肝相関 / 抗線維化 / 歯髄幹細胞 / 肝硬変 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究2年目に当たり、申請書記載の「研究実施予定」に従って、1) in vitro系におけるSHED-CMの治療効果、2) 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルのin vivoにおける腸管循環に着目したメカニズム解析を中心に検討・解析した。 初年度にウェスタンダイエット食と高濃度糖水、週1の少量四塩化炭素腹腔内投与を用いたヒトNASH類似肝線維化マウスモデルに対して、SHED-CMが抗炎症・線維化抑制効果を示すことがわかっていた。具体的にはSHED-CM治療群における血清トランスアミナーゼの改善、中性脂肪・遊離脂肪酸の低下、また肝組織におけるα-SMA陽性線維化面積の有意な減少を認めた。しかしながら今回追加検討にて、NAFLD Activity Score(NAS)における炎症因子は改善あるものの、脂肪沈着の程度には変化を認めなかった。つまり、SHED-CM治療は肝内脂肪代謝には関与せずに抗炎症・線維化抑制効果を示していると考えられた。 続いてNASH発症の原因の一つと考えられている腸肝相関を検討するために、肝組織におけるLPS受容体TLR4発現、また腸管透過性に関与する遺伝子であるZo-1の回腸末端における発現を解析するとqPCRにおいてSHED-CM群におけるTLR4の有意な発現低下、また蛍光免疫染色においてZo-1陽性細胞の有意な増加を認めた。 最後にin vitroにおいて腸管透過性へのSHED-CMの効果を検討するために、IFNγ・TNFαを用いてCaco-2細胞のtight junctionを破壊したのちにSHED-CM置換を行い、その影響を検討した。SHED-CM治療群では、Zo-1陽性細胞の増加、ならびにFITC-デキストランを用いた腸管透過性確認試験においても、SHED-CMの透過性維持効果が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね研究実施予定通りに進んでいる。一部、in vitroにおいて星細胞(Lx-2)のviabilityやTGF-βによる活性化が安定しないため、SHED-CMによる星細胞への影響は検討しきれていない。しかし、SHED-CMのマクロファージを介した肝内炎症・線維化抑制や腸管透過性への影響など、これまでに予定した主なメカニズム解析は完了しており、これまでのデータをまとめて論文化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、SHED-CM内のどの因子が治療効果発現メカニズムに直接的に関与しているか、特に腸肝相関に焦点を当てて、検討したいと考えている。また腸管透過性に直接的に影響しうる、腸内細菌叢に関してもSHED-CMとコントロール群において、次世代シークエンサーを用いて解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度、必要物品購入に関して、158,848円の予算残高が発生してしまった。本来は免疫染色用の抗体を購入する予定であったが、海外からの輸入に時間がかかり、本年度までに間に合わなかった。不要物品購入を行うよりも、次年度への繰越を行うべきと考えた。そのため本年からの繰越し残金は、次年度(最終年度)に購入できなかった抗体費を中心に、全て消化する予定である。
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Research Products
(1 results)