2019 Fiscal Year Research-status Report
laminA/CのG-quadruplexを介した大腸がん悪性化機構の解明
Project/Area Number |
19K17465
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Research Institution | Osaka International Cancer Institute |
Principal Investigator |
西川 達哉 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 腫瘍循環器科診療主任 (80781757)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | LMNA / G-quadruplex / 大腸がん / 機能性RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
Lamin A/Cは大腸がんで発現量が変化しており、予後にも関与していることが報告されている。LMNA遺伝子にはさまざまな転写産物が報告されており、その1つであるVariant6(以下LMNA-V6)に注目した。LMNA-V6は一般的なLMNAのエクソン1の上流にさらに3つのエクソンが存在している。この転写産物の機能についての報告はこれまでにない。 RT-qPCRによる解析ではLMNA-V6の発現量はごくわずかであるが、大腸がん細胞株(HCT116)で正常大腸細胞株(HCEC)より多く発現していた。このLMNA-V6の上流3つのエクソンすぐ上流にはグアニンを多く含む配列を認め、この領域のプロモーターとしての役割を見つけた。このグアニンを多く含む領域には、6つの潜在的にグアニン4重鎖を形成する可能性のある配列があり、その存在をクロマチン免疫沈降(ChIP-PCR)、ゲルシフトアッセイ、円二色性(CD)スペクトラム解析にて明らかにした。 さらに、siRNAにてLMNV-V6を特異的にノックダウンさせると、Lamin A, CのmRNAとタンパク質がともに有意に増加した。また、通常のLMNA遺伝子のプロモーター活性は、LMNA-V6のノックダウンにて亢進することがわかった。これらのことから、LMNA-V6は機能性RNAとしてLMNA遺伝子のプロモーター領域へ関与し、その発現を調節している可能性を見出した。 今後はLMNA-V6による過剰発現細胞による解析や、マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析を行い、LMNA-V6発現変化によるがん細胞への影響や表現型の変化を確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、LMNA-V6の存在を明らかにするとともに、その発現メカニズムと、機能解析を行うことを目標としていた。 LMNA-V6はごく少量だが、正常細胞(HCEC)よりがん細胞(HCT116)で多く発現していた。LMNA-V6の上流には複数のG-quadruplex構造を認めることクロマチン免疫沈降(ChIP-PCR)、円二色性スペクトラム解析、ゲルシフトアッセイを用いて示し、またルシフェラーゼプロモーター解析にて同部位がLMNA-V6のプロモーターとして機能していることを見出した。さらに、LMNA-V6のノックダウンにて通常のLMNA A/Cタンパク質をコードするmRNAの発現が増加することがわかった。 当初の目標に到達しており、研究の進展は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はLMNA-V6のさらなる機能解析を行う。まずLMNA-V6の過剰発現細胞を作成し、LMNA A/Cの発現量の変化を確認する。さらに、LMNA-V6の変化による表現型変化を確認するため、大腸がん細胞株の細胞増殖能を評価する。また、LMNA-V6のノックダウン、過剰発現後の細胞を用いて、遺伝子発現変化をマイクロアレイを用いて網羅的に解析することで、発現量が変化する遺伝子を同定し、さらなる機能の解析を行う。
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Causes of Carryover |
初年度は予定していた研究工程が順調に進んだこと、学会参加が少なかったことから使用額が少なくできたため、次年度使用が生じた。 次年度には、物品費として、試薬等の消耗品や外部委託によるベクター作成などに費用に充てる。また、本研究の内容を学会発表を行い、最終的に論文発表を行うための費用とする。
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