2019 Fiscal Year Research-status Report
粘膜下層剥離面治癒を促進するHGF含浸外用剤の開発
Project/Area Number |
19K17467
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐々木 文郷 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (40735297)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HGF / 多孔膜 / ESD / 瘢痕 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は消化管傷害モデルをミニブタを用いて新規被覆剤の胃ESD後人工潰瘍に対する有用性を明らかにした。 医用ミニブタに胃ESDを施行して潰瘍を左右対称性に2ヶ所作成し、1ヶ所にシートを貼付した(P群)。術後7日、14日目に内視鏡検査を施行、術後14日目に屠殺し、下記項目を非被覆潰瘍(control;C群)と比較検討した。(1)潰瘍面積(mm2)の経時変化、(2)HE染色、アザン染色および免疫染色にて粘膜下層の炎症細胞浸潤、線維化、血管新生およびVEGFの発現、(3)固有筋層の萎縮・線維化スコア(atrophy and fibrosis score; AF score)、(4) 固有筋層の肥厚:潰瘍部と非潰瘍部の固有筋層厚の比(ulcer/non-ulcer; U/NU比)。 P群はC群と比較して、(1)術後7日目に潰瘍の縮小は遅延したが(269±51 mm2 vs 125±6 mm2, p<0.05)、術後14日目には同等であった(40 ± 16 mm2 vs 28 ± 23 mm2, p=0.357)。(2)粘膜下層の炎症細胞が有意に少なく(278±17 vs 360±27, p<0.05)、α-SMA陽性細胞が有意に少なかった(10.6±2.1% vs 14.7±1.3%, p<0.05)。また、新生血管数が有意に増加した(34±2 vs 20±1,p<0.05)。さらにVEGF陽性細胞が有意に増加し17.0%±0.7% vs 14.2%±1.3%, p<0.05)、Ibal染色とVEGF染色の免疫二重染色にて、VEGF陽性マクロファージを認め、VEGFはマクロファージ由来と考えられた。(3)固有筋層の萎縮・線維化(AF score)が有意に低下し(3.3 vs 1.3, p<0.05)、(4)固有筋層の肥厚(U/NU比)が有意に低下した(1.68 vs 1.27, p<0.05)。 以上より、新規被覆剤は、胃ESD後潰瘍の粘膜下層の炎症・線維化、固有筋層の線維性肥厚を抑制した。加えてマクロファージが産生するVEGFを補足し、血管新生を促進したと考えられた。以上の機序から、新規被覆材は、ESD後潰瘍の瘢痕化あるいは瘢痕狭窄を抑制する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規被覆剤は、胃ESD後潰瘍の粘膜下層の炎症・線維化、固有筋層の線維性肥厚を抑制した。加えてマクロファージが産生するVEGFを補足し、血管新生を促進したと考えられた。以上の機序から、新規被覆材は、ESD後潰瘍の瘢痕化あるいは瘢痕狭窄を抑制する可能性が考えられた。しかし、HGFの生体内での不安定さの改善に時間を要しており、HGFを多孔膜へ含浸させる点を現在問題点として取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
HGFの安定化について、含浸方法を含め、検討を続けている。動物モデルは確立し、多孔膜の効果は確認できたため、HGF含浸製剤についての問題を解決すべく検討を行う
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