2021 Fiscal Year Annual Research Report
潰瘍性大腸炎産後増悪に隠れた上皮障害とサイトメガロウィルスの関係解明と予防法確立
Project/Area Number |
19K17475
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
猪 聡志 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (90568742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 産後増悪 / タイトジャンクション / オキシトシン / サイトメガロウィルス |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎(UC)は原因不明の腸炎で再燃寛解を繰り返す慢性疾患である。妊娠中や産後に再燃・増悪しやすいことが知られている。罹患患者には出産を控えた女性が多く含まれ産後増悪の対策は喫緊の課題である。しかしながら産後増悪の原因は明らかでない。本研究では産後大腸粘膜の特徴を明らかにして、さらにサイトメガロウィルスの再活性化が大腸粘膜に与える影響を明らかにすることを目的とした。初年度に産後粘膜の性状としてTJP1、OCLN発現が減弱することにより、粘膜透過性亢進(便中水分量の増加)を促し、実験腸炎の増悪に関与する事が示唆する結果が得られた。次年度には、産後ホルモンがタイトジャンクションに与える影響について検討を進め、産後ホルモンであるオキシトシン投与によってもTJP1、OCLN発現が減弱を呈することが明らかになり、これらは産後粘膜の性状と類似していた。一方でオキシトシン投与後に実験腸炎を誘導しても腸炎の増悪は確認できなかった。オキシトシンによるTJP1、OCLN発現低下は産後増悪のひとつの誘因にはなりうるが、その他の因子の関与があることも示唆された。最終年度にはCMV感染が周産期のTJP1、OCLN発現低下に与える影響について検討を進めた。CMV感染によってよりTJP1、OCLN発現低下が顕在化する傾向が得られたが、統計学的な有意な差を示すことはできなかった。またCMV感染によって周産期の実験腸炎が増悪するという結果は得られなかった。一連の結果から、産後増悪の一因としてオキシトシンによるTJP1、OCLN発現低下を介した粘膜透過性亢進が関与する可能性が示唆された。産後増悪にはオキシトシン以外の多因子の影響があると考えられるが、今回の検討ではCMV感染の産後増悪への関与は乏しく、産後増悪の要因解明にはさらなる検討が必要と考えられた。
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