2021 Fiscal Year Research-status Report
Sarcopenia prevention for improving pancreatic cancer outcome
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19K17480
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
佐藤 裕基 旭川医科大学, 医学部, 医員 (20747373)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サルコペニア / PDX / 膵癌 / 骨格筋量 / ドラッグリポジショニング / フレイル / 悪性腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に行った筋芽細胞と膵癌初代培養細胞株との共培養系(In vitro系)におけるトランスクリプトーム解析の結果、複数の新規液性因子や代謝経路・転写因子を同定した。2021年度はこの結果を基盤にIn vitro系、In vivo系において患者由来膵癌細胞株を用いて発展研究を行った。 しかし、患者由来膵癌細胞株では網羅的遺伝子発現解析の結果を有する細胞株が少なく、異なる遺伝子発現プロファイルをもつ複数の細胞株を用いて、上記候補因子から骨格筋量の低下に最も寄与する因子を決定することが困難であった。そこで、In vitro系でヒト患者腫瘍移植モデル(Patient-derived xenograft; PDX)から確立した複数の細胞株を用いることとし、特に液性因子に着目して検討を行った。昨年度までと同様に共培養を行い、筋芽細胞の分化抑制の程度をミオシン重鎖の蛍光免疫染色を用いて評価した。その結果、特定の候補因子の発現量と、筋芽細胞の分化抑制レベルに相関関係を見出した。さらに同じ細胞を用いて共培養を再度行い、同定された候補因子に対する中和抗体を培養上清に添加したところ、分化抑制が解除された。 この結果をIn vivo系で検討するため、この細胞株をそれぞれ免疫不全マウスに移植し、14日間後に腫瘍とマウスの筋肉を採取した。この結果、細胞株で同定した候補因子が高発現している腫瘍を移植した群では、中和抗体投与により対照群に比して筋肉量の低下が抑制されていた。これにより、膵癌が骨格筋量低下に与える経路がある程度推定できた。一方、骨格筋量の低下抑制が膵癌の進展に与える影響については引き続き検討を続けている。 来年度以降は、国際共同研究の形でこの研究を深化させ、実際の臨床応用に向けた展開を視野に、引き続き候補薬剤や対象候補因子の絞り込みを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vitro系においては、患者由来膵癌細胞株では網羅的遺伝子発現解析の結果が揃っていないものもあり、ヒト患者腫瘍移植モデル(Patient-derived xenograft; PDX)から確立した細胞株を用いて実験を継続している。それぞれの細胞株で網羅的遺伝子発現解析のデータが揃っているため、患者由来膵癌細胞株のデータと比較することにより、効果的に骨格筋量の低下に寄与する液性因子の絞り込みを進めることができた。この網羅的発現の解析結果から、2021年度は同定した因子の発現量が異なる3株を用いた。 当初はマイクロRNAを標的とした研究展開を予定していたが、上記の絞り込みの過程で複数の転写因子や代謝経路に関連する因子、液性因子・サイトカインなどが同定されたため、現在はこれらの因子について、一つずつ骨格筋量に与える影響を確認している。 In vivo系は2019-2020年度においてマウスの供給及び動物実験室の使用に制限が生じた影響もあり、若干の遅れが生じた。しかし、In vitro実験と並行して行ったため、一定の進捗は得られた。In vitro系で明らかとなった候補因子をIn vivo実験においても定量し、再現性のあるデータが得られた。PDXを用いた実験では、腫瘍間質はマウス由来となるため1回の腫瘍採取で腫瘍の影響(ヒト由来)と間質の影響(マウス由来)の遺伝子やタンパクを両方定量できる。この利点を生かし、現在はIn vitro系で認められた候補因子の間質中での遺伝子発現を定量している。 骨格筋が腫瘍形成・進展に与える影響については、骨格筋由来の因子を詳細に解析できる専門家が必要である。そこで来年度より採択頂いている国際共同研究強化(A)を基盤として研究計画を立案し、マサチューセッツ総合病院との共同研究を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は下記を目標に研究を展開する。 ① In vitro系;引き続きPDXより樹立した細胞株を基盤に研究を行う。これまで用いてきたヒト由来膵癌培養細胞株で、候補因子をshRNAなどでノックダウンし、その細胞と骨格筋との共培養により、分化抑制が解除されるかについて検討を行う(蛍光免疫染色、qPCR法)。PDXを用いた実験では、現時点では蛍光免疫染色のみでの定量にとどまっている。すでに蛍光免疫染色での定量とqPCR法を用いた骨格筋分化マーカーの定量は一貫して再現性があることを確認しているが、ヒト由来膵癌培養細胞株実験と同様にPCRやWestern blot法での骨格筋の分化抑制についても確認する。 ② In vivo系;膵癌同所移植と皮下移植モデル双方での比較検討を行う。これまでは腫瘍細胞そのものが骨格筋量に与える影響を中心に検討してきたが、腫瘍間質の各種候補因子の影響も無視できないことが予備検討から明らかとなりつつある。そこで来年度は、PDXモデルまたはPDX由来細胞株を移植した系を中心に、腫瘍細胞と腫瘍間質の両方について候補因子の定量を行い、各細胞株を移植後、候補因子の間質での発現量(qPCR及びWestern blot法を用いる)にも着目する。 ③ 発展的研究;候補因子の絞り込みを終えた後、患者血清を用いて、血清中の候補因子の定量が必要と考える。そこで、患者血清中の候補因子の定量を行い、さらにその患者の臨床情報や骨格筋量との関連を検討することにより、最終的に同定された候補因子の臨床的意義についての検討も考慮する。また、同定された候補因子を中和する薬剤について上市されている薬剤を中心に、ドラッグリポジショニングの可能性についても検討する。
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Causes of Carryover |
投稿論文の一部が「招待あり」となったため、論文投稿・校正費用の一部が免除された。 マウスを用いた実験では、免疫不全マウスを一括納入することによりコストの低減を図ることができた。qPCRやWestern blot法、蛍光免疫染色の実施に必要な試薬類、さらに中和抗体については、すでに研究室で保管されているプライマーや抗体を用いて予備実験を行うことで、必要量の低減を図った。本実験のみの必要量とすることで、必要量が少なくなり、次年度使用額が生じた。 一方、2021年度までに遅れていたIn vivoの実験系の回復に伴い、必要な試薬量やマウスの飼育費用が増大する可能性がある。また2022年度は最終年度となるため、論文化に向けた検証的実験が必要となる可能性が高い。特にqPCR法と蛍光免疫染色については、複数回行うことで十分に再現性を担保する必要があり、次年度使用額を充当する予定である。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Mutant GNAS limits tumor aggressiveness in established pancreatic cancer via antagonizing the KRAS-pathway2022
Author(s)
Kawabata H, Ono Y, Tamamura N, Oyama K, Ueda J, Sato H, Takahashi K, Taniue K, Okada T, Fujibayashi S, Hayashi A, Goto T, Enomoto K, Konishi H, Fujiya M, Miyakawa K, Tanino M, Nishikawa Y, Koga D, Watanabe T, Maeda C, Karasaki H, Liss AS, Mizukami Y, Okumura T
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Journal Title
Journal of Gastroenterology
Volume: 57
Pages: 208~220
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Prognostic factors to predict the survival in patients with advanced gastric cancer who receive later‐line nivolumab monotherapy?The Asahikawa Gastric Cancer Cohort Study (AGCC)2022
Author(s)
Tanaka K, Tanabe H, Sato H, Ishikawa C, Goto M, Yanagida N, Akabane H, Yokohama S, Hasegawa K, Kitano Y, Sugiyama Y, Uehara K, Kobayashi Y, Murakami Y, Kunogi T, Sasaki T, Takahashi K, Ando K, Ueno N, Kashima S, Moriichi K, Sato K, Yuzawa S, Tanino M, Taruiishi M, Sumi Y, Mizukami Y, Fujiya M, Okumura T
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Journal Title
Cancer Medicine
Volume: 11
Pages: 406~416
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Concepts and Outcomes of Perioperative Therapy in Stage IA-III Pancreatic Cancer?A Cross-Validation of the National Cancer Database (NCDB) and the German Cancer Registry Group of the Society of German Tumor Centers (GCRG/ADT)2022
Author(s)
Bolm L, Zemskov S, Zeller M, Baba T, Roldan J, Harrison JM, Petruch N, Sato H, Petrova E, Lapshyn H, Braun R, Honselmann KC, Hummel R, Dronov O, Kirichenko AV, Klinkhammer-Schalke M, Kleihues-van Tol K, Zeissig SR, Rades D, Keck T, Fernandez-Del Castillo C, Wellner UF, Wegner RE
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Journal Title
Cancers
Volume: 14
Pages: 868~868
DOI
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[Presentation] Solid pseudopapillary neoplasmとの鑑別に苦慮した限局型自己免疫性膵炎の1例2021
Author(s)
寺澤 賢, 河端 秀賢, 中田 裕隆, 佐藤 裕基, 藤林 周吾, 林 明宏, 岩本 英孝, 後藤 拓磨, 山北 圭佑, 高橋 賢治, 北野 陽平, 今井 浩二, 横尾 英樹, 上小倉 佑機, 青木 直子, 湯澤 明夏, 谷野 美智枝, 水上 裕輔, 藤谷 幹浩, 奥村 利勝
Organizer
第129回日本消化器病学会北海道支部例会・第123回日本消化器内視鏡学会北海道支部例会
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[Presentation] 22年間の経過観察の後に膵全摘を行った膵管内乳頭粘液性腫瘍の1例2021
Author(s)
中田 裕隆, 河端 秀賢, 寺澤 賢, 佐藤 裕基, 藤林 周吾, 林 明宏, 岩本 英孝, 後藤 拓磨, 山北 圭介, 高橋 賢治, 北野 陽平, 荻原 正弘, 横尾 英樹, 湯澤 明夏, 谷野 美智枝, 水上 裕輔, 藤谷 幹浩, 奥村 利勝
Organizer
第129回日本消化器病学会北海道支部例会・第123回日本消化器内視鏡学会北海道支部例会
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[Presentation] 林 明宏, 佐藤 裕基, 藤林 周吾, 河端 秀賢, 岩本 英孝, 高橋 賢治, 後藤 拓磨, 山北 圭介, 北野 陽平, 水上 裕輔, 奥村 利勝2021
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[Presentation] リキッドバイオプシー、内視鏡下採取検体による分子プロファイリング EUS-FNA検体と血清を用いた膵癌診断における長鎖ノンコーディングRNAの有用性2021
Author(s)
高橋 賢治, 小山 一也, 川尻 はるな, 佐藤 裕基, 藤林 周吾, 林 明宏, 河端 秀賢, 岩本 英孝, 後藤 拓磨, 山北 圭介, 北野 陽平, 水上 裕輔, 奥村 利勝
Organizer
第52回日本膵臓学会大会
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[Presentation] 切除不能膵癌化学療法例において骨格筋量低下は予後不良因子である2021
Author(s)
佐藤 裕基, 水上 裕輔, 藤谷 幹浩, 岡田 哲弘, 藤林 周吾, 河端 秀賢, 林 明宏, 後藤 拓磨, 小野 裕介, 杉谷 歩, 奥村 利勝
Organizer
第107回日本消化器病学会総会
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