2020 Fiscal Year Research-status Report
肝癌におけるマルチキナーゼ阻害剤のエピジェネティックな耐性機序の検討
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19K17482
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
日下部 裕子 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (30646708)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肝癌 / エピジェネティック異常 / EZH1/2 / ヒストンH3リジン27トリメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
エピジェネティック異常は発癌メカニズムに密接に関与するともに、近年では抗癌剤耐性獲得にも関与する可能性が報告されており癌治療のターゲットとして注目されている。本研究ではヒストンH3リジン27トリメチル化(H3K27me3)を介して標的遺伝子を抑制するポリコーム群タンパクEZH1/2に着目し、肝癌におけるヒストンメチル化異常および既存の肝癌治療薬であるマルチキナーゼ阻害剤(multi-TKI)投与によるメチル化状態の変化を検証し、EZH1/2の治療標的としての有用性を探ることを目的とする。 肝癌患者の手術検体を用いた臨床病理学的検討では、H3K27me3レベルの高い症例でrecurrence free survivalが有意に低かった。またH3K27me3レベルが上昇しているにもかかわらずEZH2発現が低い症例が認められ、それらの約半数にEZH1発現の上昇が確認された。肝癌培養細胞株においてmulti-TKI投与がH3K27me3レベルを上昇させることが確認されており、それに基づきmulti-TKIとEZH1/2阻害剤の併用投与を行なったところ、相乗的に細胞増殖能が抑制された。肝癌治療において、multi-TKIにEZH1/2阻害剤を併用してH3K27me3レベルを下げることでより高い抗腫瘍効果が得られる可能性があり、新たな治療戦略となりうることが示唆された。 multi-TKIによるH3K27me3レベルの上昇が薬剤への不応や耐性に関わっている可能性もあり、これらがどのような遺伝子に影響を与えるかを検討するためChIP-sequence及びRNA-sequenceを行い、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床検体を用いた臨床病理学的検討は予定通りに進行した。しかし本年度は肝癌培養細胞株においてmulti-TKIを投与した際の遺伝子発現変化を調べるためChIP-sequence及びRNA-sequenceを中心に行ったが、ChIP- sequenceにおいてH3K27me3レベルが上昇しているにもかかわらずRNA-sequenceでの遺伝子発現抑制が見られず、解析に難渋して実験を繰り返しているため進捗がやや遅れている。そのため本年度に行う予定であったゼノグラフトモデルを使用したin vivo実験も行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は引き続き、multi-TKI処理後の肝癌培養細胞株を用いたChIP- sequence及びRNA-sequenceの解析を進めていく。 またmulti-TKIとEZH1/2阻害剤の併用療法の有効性について、ゼノグラフトマウスモデルを用いてin vivoでも検証していく。さらにゼノグラフトマウスモデルの腫瘍組織の免疫染色でH3K27me3やEZH1/2発現の変化も検証する予定である。
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Causes of Carryover |
端数が生じたため少額の次年度使用額が生じたが、次年度の消耗品として使用する予定である。
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