2019 Fiscal Year Research-status Report
肝線維化を伴う肝発がん・再発の新規治療標的因子の機能解析
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19K17485
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岡田 光 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任助教 (50788916)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | PKM1 / PKM2 / Notch1 / Jagged1 / 肝線維化 / 腫瘍成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝硬変を背景とした肝細胞癌患者では根治的治療後でも肝細胞癌が高率に再発する。肝細胞癌の再発抑制が治療上極めて重要な課題である。そのため、肝線維化・肝硬変による肝発がん機序を解明し、新規治療法につながる基礎研究が重要である。申請者は、肝細胞癌の再発を高めるピルビン酸キナーゼM(PKM)を同定した。正常肝組織では、ピルビン酸キナーゼL(PKL)が中心に働き解糖系等のエネルギー代謝の正常状態を維持している。申請者は、PKM1が肝線維化病態進行に関与し、PKM2は肝細胞癌の腫瘍成長促進に働くと同時にPKLの機能が損失していることを発見した。PKM2は、正常肝では発現しておらず肝細胞癌の悪性度増悪とともに亢進していることが確認でき、Notch1シグナル伝達経路の活性化を促すことを示すことができた。PKM1は、活性化肝星細胞に特徴的に高発現し、Jagged1/p38MAPK経路を活性化することで肝線維化病態形成を亢進することが示せた。ピルビン酸キナーゼMのアイソタイプであるPKM1とPKM2は、発現局在・生理的役割が異なるが肝線維化・肝発がん病態形成する際に共に細胞間相互作用によって悪性度を高めるよう協調的に働く機能をもつことがわかった。つまり、PKM1及びPKM2両方とも肝線維化・肝発がんの治療標的になりえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝線維化形成は、PKM1が、腫瘍形成促進は、PKM2が関わるためPKM1とPKM2両方を標的とした肝発がん治療の開発が重要であることをin vitroで示せた。更に、PKM1とPKM2を両方発現抑制するshRNAを搭載した肝組織特異的な8型アデノ随伴ウイルスを肝線維化から肝発がんするモデルマウスに投与したところ線維化・肝発がん共に顕著に抑制することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
PKM1とPKM2は、同じプロモーター上によって制御されている。ヒトPKM1/2遺伝子上流約2kbpをルシフェラーゼベクターに組み込まれたレポーターベクターを用いて検討する。PKMプロモーター制御因子を詳細に検討するため、段階的に欠損したPKMプロモーターを作製し同定を試みる。PKMの制御領域として絞りこまれた配列に対して、プロモーターに変異体を作製し、培養細胞内PKMプロモーターの活性化を検討する。この検討の中で、最も変動があった制御領域から候補転写因子を同定する。候補転写因子を培養細胞において過剰発現させ、PKM1、PKM2の発現増加に働くかを検討する。同定できた候補転写因子とPKMプロモーターが結合しているかをクロマチン免疫沈降法にて評価を行う。PKLは、PKM1とPKM2と全く違うプロモーターによって発現調節されている。PKLもPKMと同様にプロモーター領域が搭載されたレポーターベクターを作成し、発現調節機構の評価を行う。
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