2019 Fiscal Year Research-status Report
慢性皮膚炎による腸内細菌叢の変化と炎症性腸疾患との関連性の解明
Project/Area Number |
19K17503
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
原田 洋輔 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (50725968)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 炎症性腸疾患 / 慢性皮膚炎 / 腸内細菌叢 / 免疫グロブリン / 乾癬 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚炎が腸内環境を変化させるに至るメカニズムの詳細を解明し、腸内細菌によるIBDの治療対策の提案を目指す。本研究計画の初年度では、各検討項目の実施のための評価系の確立を進めた。既に論文報告を行なった慢性皮膚炎下での腸炎症の増悪の機序をさらに詳細に明らかにするため、未処置及び皮膚炎誘導後のマウスにDSS腸炎を誘導した後、便中の細菌に結合した免疫グロブリンを解析した。骨髄移入による腸炎の改善、悪化の評価系に先立ち、皮膚炎誘導後のマウスの骨髄細胞の変化を解析した。CD11c-DTR、TLR7ノックアウトマウスは既に当方のSPF飼育施設で飼育されており、使用可能となった。研究は概ね順調に進んでおり、時間を要すると考えられていた本学での乾癬患者の便サンプルを用いるための倫理申請は認可されている。既に保持している潰瘍性大腸炎患者の腸内細菌叢のデータと合わせて関連を調べていきたい。また末梢神経を観察するための蛍光発現マウスは既に使用可能な状態となったため、免疫染色の手法と組み合わせることでより実際的な観察が可能となる。生体顕微鏡での観察といった最新の解析系も視野に入れることができ、本研究計画のさらなる進展が期待できる。腸管組織と腸管外組織のネットワークに関する報告が最近特に多く見られる。本研究の独創性を維持しながら、有効な手法やアイデアを積極的に取り込んでいきたい。今後は得られた知見からさらに研究手法を発展させ、最終目標であるIBD治療対策の提案に向けた有効なターゲットの探索を進めていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では各検討項目の実施のための評価系の確立を進めた。検討項目であるIgM結合腸内細菌の単離と解析に先立ち、IMQ皮膚炎マウスの便中の細菌を調べたところIgM結合腸内細菌の減少を見出した。また、IMQ皮膚炎を誘導したマウスでは骨髄のB細胞数が著しく減少していた。抹消神経を観察するための蛍光発現マウスとしてWnt1-GFPマウスを入手しており、腸管神経での蛍光観察が可能であることを確認した。開始当初の計画通りに研究が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度で行なった評価系の確立に向けた検討をさらに発展させていきたい。腸炎増悪を惹起する腸内細菌の同定に向け、IgM結合細菌のソーティングとメタゲノム解析の段階に進む。同時に無菌マウスへの移入を行うために単離した菌の培養を行う。末梢神経を観察できる蛍光発現マウスが使用可能となったので、皮膚炎誘導後のマウスでの腸管神経系の変化を詳細に調べる。ヒトでの治療方策を探索するために治療乾癬患者の便サンプルと潰瘍性大腸炎患者の便サンプルの解析に着手していきたい。これまでのところ大きな問題は生じていないため当初の推進方策を進めるが、実現可能性を重視し、柔軟に対応していく。
|
Causes of Carryover |
今年度に実施した研究手法や実験手技は当研究室で行われてきたものを応用したものであった。物品や機材に関して、既に研究室内で保持しているものを活用できたことで支出が想定を下回る結果となったため次年度使用額に計上した。学会参加と研究打ち合わせによる旅費が発生しなかったため次年度使用額に計上した。次年度では、抗体購入や解析依頼での支出に加え、実験手法の拡がりに伴う新規購入物品が増加すると予想される。特に腸内細菌のメタゲノム解析の依頼は高額となるため、次年度の請求分で支出する予定である。
|