2019 Fiscal Year Research-status Report
クロマチン制御とDNA修復応答に着目したラミン変異拡張型心筋症の病態解明
Project/Area Number |
19K17515
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 正道 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70794642)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 拡張型心筋症 / iPS細胞 / 病態解明 / ラミン変異 / 網羅的遺伝子発現解析 / エピゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラミン遺伝子変異を有する患者からiPS細胞、およびゲノム編集技術を用いて該当変異の修復を行ったiPS細胞のペアを複数回にわたって心筋分化誘導し、分子生物学的解析を実施するにあたって必要な心筋細胞のストックを作成した。 ラミン変異iPS由来心筋細胞およびその変異修復株を用いてシングルセル網羅的遺伝子発現解析を行うプトロコルを確立した。10x社の単一細胞分離装置を用いcDNAライブラリーを作成しシークエンサーでの解析に供した。解析の結果、変異株で特異的に発現上昇する遺伝子クラスターを同定でき、パスウェイ解析の結果DNA損傷応答に関連する遺伝子群の発現が亢進していることが明らかtなった。また、各クラスターの特徴遺伝子を抽出した結果、一部のDNA修復酵素の発現低下がみられることが判明した。 また、CUT and RUNと呼ばれる、DNaseを結合した抗体を用いて実施するエピゲノム解析手法をiPS由来心筋細胞に応用し、細胞数等の条件を検証した結果、良好に濃縮を検出できるプロトコルを開発した。疾患・編集細胞株を用いて、各ヒストン修飾に対する抗体を用いてエピゲノム解析を実施した結果、H3K9me3の濃縮で示されるヘテロクロマチン修飾領域が疾患株において有意に増加していることが示された。 遺伝子変異マウスについては、教室内研究者と協力の上シングルセル解析およびエピゲノム解析を行うサンプル調整を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ラミン変異を有する拡張型心筋症の病態を解明することを目的としている。 すでにラミン変異を有するiPS細胞から心筋細胞を作成し種々の分子生物学的解析を行う基盤を確立しており、in vitroでの疾患モデリングには成功している。 網羅的遺伝子発現解析で、疾患株において特定のパスウェイの活性化が見られること、複数の分子群で発現の差異が見られることを示しており、介入すべき分子候補を同定している。 また、網羅的エピゲノム解析によって、疾患株においてゲノム上のヘテロクロマチン修飾の変化を同定した。 以上から、すでに病態解明につながりうる疾患特異的な分子生物学的特徴を捉えており、研究遂行はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的遺伝子発現解析で同定されたDNA損傷応答に着目し、DNA損傷応答を減弱する化合物およびsiRNAの介入実験を行って細胞表現型を検証する。また、いくつかのDNA修復酵素の低下を確認しており、これらの修復酵素のレスキュー実験を行う。 エピゲノム解析の結果判明した、H3K9me3の濃縮部位の病態における意義を明らかにするため、DNA損傷部位とheteroクロマチン領域濃縮部位に関連性がないかを3D DNA FISHおよび免疫染色によって検証する。 ラミン分子やDNA修復分子、γH2AXなどそのほかの分子のChIP-seqを行い、ラミン変異のクロマチン構造維持、DNA修復過程における意義を明らかにする。 マウスサンプルを用いた解析を進める。
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Causes of Carryover |
初年度においては、すでに作成済の細胞ストックを用いて実験系を立ち上げる業務が大部分を占めていたため、解析に使用する予定であった物品費をかなりセーブすることができた。 来年度は、複数の抗体を用いた網羅的解析、FISH実験、タンパク結合解析実験等のプロトコルの確立または外注を含む実験を複数予定しており、繰越金額をすべて使用することができると考えている。
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