2019 Fiscal Year Research-status Report
TRPV1阻害による心筋障害リバースリモデリングと心室性不整脈耐性の検討
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19K17517
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉江 幸司 信州大学, 医学部附属病院, 助教(特定雇用) (60724515)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TRPV1 / NRSF / 交感神経求心性神経 / 心筋線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
TRPV1ノックアウトマウスを凍結胚より生誕させ、飼育環境を整えた。その後、当研究室にて飼育中のNRSF心筋特異的ノックアウトマウスとの交配を進めた。現時点で、親も含め70個体のTRPV1 x NSRF ノックアウトマウスが誕生し、TRPV1ヘテロノックアウト有無 x NSRFヘテロノックアウト有無の4郡間において比較検討を実行中である。現状、その生存率についてフォローアップを行なうと同時に、TRPV1ノックアウト単独マウス、NRSF心筋特異的ノックアウト単独マウスならびに、両者のかけあわせノックアウトマウスに対して、交感神経求心性神経の阻害の有無を確認するため、免疫染色を行い、PGP9.5とCGRPの染色を確認中である。さらには、心筋リモデリングと不整脈耐性の根幹として心筋線維化の程度を確認するべく、各マウスの週齢による段階的な心筋線維化の進行、抑制を画像的評価ならびにRNA定量化による評価を行なっている。その他、経胸壁心エコーを用いたそれぞれのマウスにおける心機能評価を並行して施工中である。それぞれのマウスにおける生存率の差異、生存期間が明らかになってきたところで、次なるステップとして、その致命的となりうる原因が心室性不整脈発症によるものか否か、植え込み型ループレコーダーでの評価と、プログラムペーシングならびにCesium chlorideによる薬理学的不整脈誘発を視野としている状況である。これらの結果により、我々の先行研究であるResiniferatoxin(RTX)を用いた心臓交感神経求心性神経の機能阻害がTRPV1ノックアウトによっても同様に実現し、心筋障害モデルマウスに対して線維化の抑制による心機能の改善と、不整脈耐性を確認できれば、これらを獲得できる創薬ターゲットとなりうる可能性を確認できるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各ノックアウトマウスの飼育状況および環境調整、ノックアウトマウス同士の交配は順調に進んでいる。交感神経求心性神経の免疫染色ならびに線維化染色に至る動物実験プロトコールの進行に当たっても技術的な問題は生じていないが、COVID-19による実験施設の使用制限があることから、組織の免疫染色については少し時間が必要な状況である。4郡間のかけあわせマウスの生誕率の差異があることから、生存率データの取得に時間を要している面はあるが、この点についても概ね問題なく研究を進行させている。心機能評価においても心臓超音波を用いた評価に当たって、技術面での問題はない。ループレコーダーの使用による致死的要因の検索にあたり、その電池寿命によって購入金額が大きくなることから、その植え込み至適時期ならびに電池消耗を考慮したタイミングの見極めが、現状の課題である。また不整脈耐性評価のための実験にあたり、心電図モニターの用意と、そのための実施場所の調整を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
TRPV1ヘテロノックアウト有無 x NSRFヘテロノックアウト有無の4郡間における生存率と具体的な生存期間が確認されれば、その生存率の差異のメカニズムに迫っていく段階に進む。至適時期での植え込み型ループレコーダーを用いた、心室性不整脈発症の有無、プログラムペーシングならびに薬理学的心室性不整脈誘発の有無、各成長段階における線維化レベルの評価、心臓交感神経求心性神経の阻害とRAS系システムの関与の可能性について検討を行なっていく展望である。現在COVID-19の影響下における動物実験施設の使用制限が生じており、円滑な実験計画の推進のためにも、施設の再開が待たれるところである。
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Causes of Carryover |
初年度はマウスの交配と飼育、各種マウスの生存率の確認に時間を必要とし、同時に心臓超音波検査や得られた検体の解析と組織学的解析を開始している。この生存率のデータは直接経費に大きく関わってくる不整脈耐性の検討実験や、テレメトリーモニタリングによる死因の確定に大きな情報となり、これらの検証に必要となる高額なモニタリングシステムを可能な限り、効率的に無駄のない資金運用を行うため、金額の持ち越しとなった。確実な生存率データが揃い、上述の検証に進める段階となった時に、購入及び使用期間のタイミングを見極め、直接経費使用とさせていただきたいと考えている。
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