2019 Fiscal Year Research-status Report
先天性QT延長症候群の遺伝子変異に基づく病態評価と治療法の確立
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19K17520
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
八木 典章 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20720105)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | LQT / 先天性 / 遺伝子変異 / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では先天性QT延長症候群(LQTS)の表現型(臨床像)について、遺伝型および遺伝子変異毎に評価を行い、遺伝子変異からリスク因子の評価や適切な治療法の確立を目指している。1年目の令和元年度については、既存のLQTS患者データベースの確立と新規患者登録、および遺伝子解析を中心に行った。 既存の1500家系のLQTSについて、データの欠損を確認し、可能な症例については再調査を行い、データベースの補完を実施した。 一部症例については、他の遺伝性不整脈(カテコラミン誘発性多形性心室頻拍など)の疑いもあるため、本研究のデータベースから除外した。また次世代シークエンサーで解析されたコホートデータベースの進歩により、これまで疾患の原因と判断していたLQTSの原因遺伝子変異の一部が、人種特異的な多型であることも判明してきた。 そのため、これまで同定された変異について、その病原性について再評価を行った。令和元年度は90家系の登録があり、次世代シークエンサーを用いて遺伝子解析を実施した結果、KCNQ1変異を15人、KCNH2変異を13人、SCN5A変異を2人、さらにLQT7の原因遺伝子であるKCNJ2変異を2人に同定した。現在これらの新規登録患者について臨床像をまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、同定されたLQTSの遺伝子変異を用いて、そのリスク評価を行うことを目的としており、そのためには、LQTSデータベースの充実・確立が不可欠である。そこで初年度である令和元年度は、これまでに登録したLQTS症例の確認、同定された変異の評価を中心に実施した。 LQTS症例の多くは心電図健診でQT延長が記録された無症候例であり、これらの症例では変異同定率は低いものの、一定の割合で変異保持者がいるため、遺伝子解析を実施するための基準作成も必要と考えられる。 また令和元年度は90家系の新規LQTS患者の登録があり、32名の変異保持者を同定した。これらの変異保持者についても、データベースに追加登録を行った。 あわせて、これまでに実施されている変異チャネルの解析結果データを調べ、機能解析を必要とする新規変異についての確認を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度以降も、新規患者登録と遺伝子解析を含めたデータベースの充実を進めるとともに、新規変異の変異チャネル解析を実施する。ただ遺伝子診断の分野では、病原性不明(variant of unknown significance, VUS)の変異(多型)に関する世界的な取り組みが進められている。循環器分野では不整脈と心筋症に関して研究が進められているが、特にLQTSのLQT1-3については、昨年から今年にかけて、立て続けにハイスループットな方法を用いた解析結果が報告されている。そのため、変異の特徴(部位やアミノ酸置換、3D解析)を活用し、実際の変異チャネル解析を実施しなくても、変異チャネルの機能異常を評価することが可能になると考えられる。そのため、変異の構造解析を用いた機能評価についても取り組んでみたい。 さらに今年度は最終的なゴールである遺伝子変異に基づくリスク評価を目指して、評価項目の解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
R2年度、検査試薬を購入予定のため
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