2020 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム修復タンパクXRCC3遺伝子多型の心肥大発症・進展機序における役割
Project/Area Number |
19K17526
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂井 千恵美 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (90827982)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 心肥大 / 遺伝子多型 / 多倍体化 / DNA損傷 / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム修復タンパクXRCC3の遺伝子多型ではDNA複製時に細胞分裂が起こらず倍数性が増加(核内倍加)する ことが知られている。我々はこれまでにXRCC3遺伝子変異が心肥大発症リスクに関与することを報告している。本研究はXRCC3遺伝子多型に誘発される核内倍加が心肥大の発症・進展に関与するかを検討することを目的としている。 まず、ヒトXRCC3遺伝子多型のXRCC3T241Mをマウス線維芽細胞に導入し検討を行った。XRCC3T241M導入により、細胞の肥大化が起こることを認めた。また、核相が4N以上の多倍体化細胞の増加、DNA損傷の蓄積、細胞老化、炎症性サイトカインMCP1の発現増加を確認した。 次に、マウス心房由来心筋細胞を用いて検討を行った。アドレナリン受容体作動薬(イソプロテレノール)の慢性的投与によって心肥大が誘導されることが知られている。高濃度のイソプロテレノール中で細胞を培養すると細胞質中のDNA断片が増加することが確認された。さらに核由来のDNA断片だけでなくミトコンドリア由来DNA断片も増加することを確認した。 これらの結果はXRCC3遺伝子多型が心筋細胞におけるDNA損傷やミトコンドリア損傷を介して心肥大の発症に関与することを示唆している。今後は、ゲノム編集技術を用いて心筋細胞にXRCC3T241Mを導入し、核内倍加による肥大化が起こるか否か、DNA修復経路への影響を詳細に検討し、心肥大発症のメカニズムを明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遺伝子改変マウスの作製が困難であるため、マウス心房由来の心筋細胞株(HL-1)を入手した。細胞は安定して増殖するに至ったが、HL-1細胞用培養液の海外からの取り寄せで問題があったため一時培養の中断を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
HL-1細胞を用いたin vitroの検討を進めていく。CRISPER-Cas9システムによるXrcc3変異型細胞の作製準備中であるが、これが困難な場合には、ヒトXRCC3変異型をHL-1細胞に導入し検討する予定である。当研究室で所有しているDNA修復タンパクKu80ノックアウトマウスをXrcc3変異マウスの代替として使用し、このKu80ノックアウトマウスから心筋細胞の分離を試みる予定である。Ku80はXrcc3とは異なるDNA修復経路に関与しているため、Ku80欠損細胞でendoreduplicationが起こるか否かを確認する必要がある。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため学会がウェブ開催に変更になり、移動費や宿泊費等の学会参加経費が不必要になったため。 次年度はマウス心筋細胞を用いた実験の物品の購入に充てる予定である。
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