2019 Fiscal Year Research-status Report
超音波処理を施した酸化ストレス耐性細胞を用いる新規血管新生療法の開発
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19K17540
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
吉川 尚宏 久留米大学, 医学部, 助教 (70811082)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管新生療法 / ヒト皮下脂肪組織由来再生細胞 / 超音波 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、超音波照射の物理刺激を用いて血管新生細胞の酸化ストレス耐性および血管新生因子の分泌能を増強して血管新生療法の効果増大をもたらす手法の検証・開発を行うことである。 血管新生細胞として臨床で使用されている皮下脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)をT25フラスコで培養し、次いで低栄養・低酸素・H2O2 1mMを用いた酸化ストレスの三条件で24時間負荷を与え、酸化ストレス群が低栄養群・低酸素群と比較して有意に生存率低下を来すことを確認した。 このことによりADRCsの生存において酸化ストレスが重要なリスク因子であると判断した。 ADRCsは抗酸化物質(SOD, GPx)や血管新生因子(VEGF, HGF, Ang-1, Ang-2)を分泌することが知られている。臨床用超音波プローブを用いてADRCsへ超音波刺激を与えて抗酸化物質や血管新生因子の分泌能の向上がみられるか検証する。 また、超音波照射に伴い活性酸素種が産生されることが知られている。超音波の強度・照射時間に伴う活性酸素種の産生量およびADRCsの生存率に影響するか検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)をT25フラスコで培養し、次いで低栄養・低酸素・H2O21mMを用いた酸化ストレスの三条件で24時間負荷を与えた(n=6)。各群の生存率は低酸素群93.7%、低栄養群100%に対して酸化ストレス群18.4%と有意な低下(p<0.01)がみられた。以上よりADRCsの生存に酸化ストレスが最も影響を与えると判断した。 ADRCsは血管新生因子(VEGF, HGF, Ang-1, Ang-2)や抗酸化物質(SOD, GPx)を分泌することが知られており、超音波照射の物理刺激でこれらの分泌能の向上がみられるか検証する。 また、超音波照射に伴い活性酸素種が産生されることが知られている。超音波の強度・照射時間に伴う活性酸素種の産生量およびADRCsの生存率に影響するか検証する。 現在は超音波照射のプロトコル(詳細は「今後の研究の推進方策」に記載)を作成中である。 以上より本研究の進捗は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に示した通り、ADRCsに対する超音波照射のプロトコルを作成している。実験に使用する細胞数を節約するため、当初予定していた超音波照射の実験プロトコルにおいて細胞保存用バッグの代わりに96welプレートを用いる手法へ変更することとなった。本手法では使用する細胞数を10分の1以下に抑えることが可能となる。 臨床応用を目標として、超音波照射には臨床用のプローブを使用する。超音波強度の指標には、臨床用エコー機器で調整可能なMechanical Index(MI)を使用する。MIおよび超音波照射時間による複数の条件下でADRCsへ超音波を照射し、ADRCsの生存率および血管新生因子(VEGF, HGF, Ang-1, Ang-2)や抗酸化物質(SOD, GPx)の分泌能をELISA法により計測・比較する。
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Causes of Carryover |
当該年度の所要額よりも実支出額が低額となった。その理由として、実験に使用する細胞数を節約するため、当初予定していた超音波照射の実験プロトコルにおいて細胞保存用バッグの代わりに96welプレートを用いる手法へ変更することとなったことが挙げられる。 次年度使用額は、血管新生因子(VEGF, HGF, Ang-1, Ang-2)や抗酸化物質(SOD, GPx)の分泌能、活性酸素種を計測・比較するためのELISA計測キットの購入やその解析に充てる予定である。
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