2020 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞由来心筋細胞移植後の不整脈抑制方法の開発
Project/Area Number |
19K17555
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小林 秀樹 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (90794389)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 再生医療 / iPS細胞由来心筋細胞 / 細胞移植 / 不整脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
純化心室筋細胞移植群では,1頭において,移植後14日目に最長9分程度持続する心室性不整脈が認められたが,移植後1ヵ月以降にはそうした不整脈は認められなかった.その他の個体では,持続性の心室性不整脈は認められなかった.心エコー図検査,マイクロCT検査における左室収縮能は,移植後1ヵ月時点で改善が確認され,その効果は移植後3か月まで保持された.組織学的には,心筋内にグラフトが確認されており,移植した細胞の長期生着が示された.グラフトは,比較的明瞭なサルコメア構造を有しており,心筋トロポニンI陽性,MLC2v陽性,MLC2a陰性,といった純化した心室筋細胞の特徴を備えていた. 一方,非純化心筋細胞移植群,コントロール群では,試験期間を通して心室性不整脈はほとんど認められなかった.しかし,非純化心筋細胞移植群においては,慢性期の左室収縮能の改善は認められず,いずれの個体においても,グラフトの生着はほとんど確認されなかった。 以上より,本実験において,純度の高い心室筋細胞の移植を行った結果,1頭においてのみ,移植後早期に心室性不整脈の発現を認めたものの,非純化心筋細胞については,グラフト生着が認められず,純化の有無による不整脈発生を直接比較することは困難であった.しかし,今回の研究で認められた細胞移植後の心室性不整脈は,過去の論文で報告されている幹細胞由来心筋細胞移植後に発生する心室性不整脈と比較すると,その持続時間や出現頻度は限りなく少ないものであった.これは,純度の高い心室筋細胞のみを移植することが,移植後に生じる心室性不整脈の抑制につながることを表している一方で,不整脈の完全な抑制には,移植細胞に対する拒絶反応など,他の不整脈発生の原因への対応が必要ということを示唆していると考えられた.
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