2019 Fiscal Year Research-status Report
酸素応答と核内受容体を介した生後心筋分化のメカニズムの解明
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19K17557
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤川 裕介 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60829109)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 心筋細胞の増殖能 / 低酸素誘導性因子 / レチノイン酸受容体 / 核内受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は胎児が母体から娩出後に受ける酸素濃度の上昇が、成熟心筋細胞への分化と、心筋細胞の増殖停止に関与している事を明らかにし、核内受容体を介したシグナルを解明する事である。 研究代表者が注目している核内受容体であるレチノイン酸受容体、特にレチノイン酸合成酵素であるAldh1a2は新生児期のマウス心室において一過性に上昇することが分かっている。また、その遺伝子の100-200bp上流においてはHIF(低酸素誘導因子)のresponse element(RCGTG)が存在しマウス・ラット・ヒトと哺乳動物においては種を超えて有していることに注目した。 まず胎児rat心筋細胞を低酸素下・通常酸素濃度下で培養したところ、低酸素環境下ではAldh1a2の発現が抑制され、通常酸素環境下ではAldh1a2の発現が上昇することを確認した。低酸素環境下でHIF1α・2α・3αのRNAinterferenceを行ったところHIF1αを抑制した時のみ低酸素環境下においてもAldh1a2の発現が上昇した。Aldh1a2がHIF1αによる負の制御を受けている事を証明した。 また、α-MHCをpromoterとするCreマウスとAldh1a2のfloxマウスを掛け合わせ心臓特異的にAldh1a2をKOするマウスを作成したが、野生型と比して体格や心臓重量などは生後1週間の時点では有意な差は得られなかった。生後7日のマウスに一次抗体にki67を用いてDAB染色+ヘマトキシリン染色をしたところ野生型と比してAldh1a2のKOマウスはki67陽性細胞の数が多く、心筋細胞分裂能が生後7日の時点でも保たれていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心筋細胞特異的にKOマウスを作成する際にTamoxifenを投与するが、新生児期(生後0-2日)のマウスにTamoxifenを投与する際にゾンデを用いて投与するために手技を習得するのに時間がかかったが、おおむね今まで得られている結果は当初予想されていた結果通りであり順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はATAC-seqを行う予定である。当初心筋特異的Aldh1a2KOマウスの心筋を用いメチル化解析を行う予定であったが、心筋細胞が生後1週間程度で永久的に増殖能を失う点や、HIF1αがレチノイン酸合成酵素のregulationを行っていた点などからATAC-seqを用いることでHIFのresponse element周囲の遺伝子が折りたたまれ、オープンクロマチンからクローズクロマチンとなりクロマチンのアクセシビリティーをマッピングすることによりグローバルに心筋の分化・増殖について評価ができると思われる点からATAC-seqによる解析が望ましいと判断した。検体は胎児ラット培養心筋を用い、レチノイン酸受容体アゴニストを投与した心筋と投与していない心筋の核膜をPCM-1で免疫沈降した後にDNAを抽出し検討する。
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Causes of Carryover |
試薬・抗体が割引価格で購入することができ、当初予定していた金額に残額が生じたため。
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