2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Mathematical Model of hiPSC-CMs for Drug Discovery and Analysis of Genetic Diseases
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19K17560
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
糀谷 泰彦 京都大学, 医学研究科, 医員 (90823013)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コンピュータ・シミュレーション / ペースメーカー機転 / hiPSC-CMs / イオンチャネル / 数理モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において、まずはヒトiPS由来分化心筋(human induced pluripotent stem cells derived cardiomyocytes: hiPSC- CMs)についての精密な数理モデルを作成することから始めた。その結果、今回のモデルによって多様な活動電位波形(action potentials: APs)を再現可能である事が明らかとなった。 またhiPSC-CMsの重要な特性である自動能に関して複数のイオンチャネルによる機転が関与していることが判明し、当モデルを用いて精細に記述することができた。ペースメーカー機転については陽イオンバックグラウンド電流やIKrをメインの動力とした機転に、ペースメーカー電流(funny current: If or hyperrepolarization activation current: Iha)やINa, ICaLが二次的に修飾する事により自動能を有する心筋細胞全体に対して統一した説明が可能となった。これら2点の内容についてはFrontiers in Physiology誌に投稿し、現在論文較正中である。 また、CACNA1c-E1115K変異によるQT延長症候群の機序やターゲット薬剤をシミュレーションにより推定し、in-vitroでの実験系において良好な成績を収めることを2019年日本不整脈心電学会学術集会で発表。共同演者としてYIA最優秀賞を受賞した。 数理最適化手法の適用による、in-vitroの実験結果からのモデルパラメータ作成については、複数のアルゴリズムを適用しその中でもGrid Pattern Search法で良好なfittin結果を得られている。 GPUワークステーションを購入・運用開始し、現在本シミュレーションモデルの移植作業を行っている。CUDAを用いたGPUコンピューティングの環境を整備し、現在コーディング作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本モデルでのhiPSC-CMsを用いた実験結果の解析により、hiPSC-CMsのみならず自動能を有する心筋細胞全てについて適用できるペースメーカー機転に関する解析が可能であることが判明した。この結果については当初の予想を上回るものであり、リードポテンシャル解析手法を用いたペースメーカー機転の詳細な記述を行うことで、ペースメーカー電流(funny current: If or hyperrepolarization activation current: Iha)に依存しないペースメーカー機転の存在や、各電流成分(IKr, ICaL, IK1, If, )がどのように寄与しているかについて説明が可能となった。同内容についてFrontiers in Physiology誌に現在投稿中であり、論文較正の段階まで進捗している。 その分、並列計算系への移行・多次元モデルの作成・数理最適化手法を用いた細胞特異的シミュレーションモデルの自動構築に関しては若干の遅れが生じたと考える。GPUワークステーションを導入し環境整備を完了。現在モデル移植のコーディングとデバッグ作業を行っている。 遺伝性不整脈疾患モデルの解析・wetとdryの両面から行う実験結果解析については当初の予定通りに進捗していると考えられる。L型カルシウムチャネル(LTCC)のカルシウムイオン選択性の異常によりQT延長症候群を来すCACNA1c-E1115K変異の症例よりhiPSC-CMsを作成し、wetでの実験結果を導入した疾患特異的シミュレーションモデルを作成した。In-silicoでdrug testingを行い有効な薬剤を選定したところ、in-vitroでも同様の実験結果を得て良好な成績を収める事ができた。この結果については2019年日本不整脈心電学会学術集会で発表し、共同演者としてYIA最優秀賞を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
GPUコンピューティングを用いた並列計算系への移行・計算速度の向上を行い、数理最適化手法やディープラーニングを用いた細胞特異的シミュレー ションモデルの自動構築を行うシステムの開発を行う。システムについてwetの実験結果と照合し、妥当性が担保されているかどうかを検証しながら進める必要がある。 並列計算のコーディング・検証が完了した後に、単一細胞モデルから、細胞直列モデル・2 次元シートモデル・3 次元モデルに拡張を行い、現在 high through-put な薬剤試験系として用いられている多点電極アレイ(Multi Electrode Array: MEA)システムでの実験結果の評価に使用できるシミュレーションモデルを構築、創薬への応用・遺伝性心疾患の新規治療法の開発を行う。 遺伝性不整脈疾患モデルの解析については更に多くの遺伝子変異に対して行う。我々の所持している疾患特異的iPS由来分化心筋の中で特にシミュレーションモデルによる解析を要すると考えられるもの(機序の複雑なもの・単細胞のみでは疾患機序が特定できないもの・hiPSC-CMsの性質のばらつきが特に大きいものなど)に対して順次疾患特異的シミュレーションモデルを構築し、それぞれに対して定量的なin-silico drug testingを行い、効率の良いdrug discoveryに寄与する。
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Causes of Carryover |
GPUワークステーション・解析用PCの購入に上記費用が生じたため。GPUは2カ年に分割して購入する計画であったが、研究の進捗を早めるため同時購入に変更とした。
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Research Products
(5 results)