2020 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化進展に伴う大動脈瘤発症のメカニズム並びに効果的な内科治療戦略の探索
Project/Area Number |
19K17591
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 哲人 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (70725829)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 糖尿病 / 大動脈 / 動脈硬化 / 石灰化 / 大動脈瘤 / 冠動脈疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、糖尿病が大動脈径拡大に対して抑制的に働くというねじれの現象が観察され、糖尿病と大動脈瘤の負の相関関係が注目されている。糖尿病は、冠動脈疾患 を始めとする動脈硬化性疾患の強力な危険因子であり、高血圧や脂質異常など動脈硬化のその他の危険因子を同時に有する事も多い。さらに冠動脈疾患や脳血 管、末梢血管疾患の進行は大動脈瘤の有病率とも正の相関をすることがわかっている。それにもかかわらず、この負の相関関係が存在するが、その詳細なメカニ ズムは十分に明らかにされていない。本研究においては、冠動脈疾患患者での糖尿病有無による大動脈径を比較検証することで、ねじれ現象を詳細に解析し、そ のメカニズムを探求することを目的とした。 今回カテーテル治療を受けた冠動脈疾患患者において、治療前後とその一年後以降の2点以上でCTを撮像した患者216名に関して、腹部大動脈径ならびに石灰化の 程度、その時系列での変化を観察した。その結果、カテーテル治療前後の時点で、腹部大動脈径は糖尿病患者において有意に小さいことが確認されたが、石灰化 の程度においては糖尿病の有無により有意な差を認めなかった。一方、その後の変化率においては、径の年次変化率については、糖尿病の有無により有意な差を 認めなかったが、石灰化の進行については糖尿病患者において有意に大きかった。これらの結果から、糖尿病の血管壁に対する影響は、その血管の動脈硬化進展 の過程の中で変化しうることが考えられた。これらの内容については、Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌に受理された。現在、さらに糖尿病患者の中での関連する因子の検討、生理活性物質などを含めた検討、解析を継続中であり、またさらに他の患者群においても検討を行なっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
生理活性物質を含めた検討を進める予定であったが、特に検体を使用した生理活性物質の測定の実施が、コロナ禍の影響で、進めることが出来なかった。現在体制を立て直し、測定作業、解析作業を進めているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
糖尿病患者、非糖尿病患者において生理活性物質(大動脈壁の変性に関わると言われている物質など)と、大動脈径、石灰化、その経時変化などとの関わりを検討 する。さらに糖尿病患者の中で、大動脈径などをエンドポイントとし、生理活性物質や薬剤などを含めた何がそれらと密接に関わっているかを検討する。
|
Causes of Carryover |
現在、生理活性物質を含めた検討、解析についても進めているが、コロナ禍において、十分に特に測定の実施について進めることができなかった。 次年度において、コロナ禍の中でもより体制を整え、糖尿病患者、非糖尿病患者において生理活性物質(大動脈壁の変性に関わると言われている物質など)と、大動脈径、石灰化、その経時変化などと の関わりを検討する。さらに糖尿病患者の中で、大動脈径などをエンドポイントとし、生理活性物質や薬剤などを含めた何がそれらと密接に関わっているかを検討する予定である。
|