2023 Fiscal Year Annual Research Report
動脈硬化進展に伴う大動脈瘤発症のメカニズム並びに効果的な内科治療戦略の探索
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19K17591
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 哲人 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (70725829)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 大動脈 / 冠動脈疾患 / 石灰化 / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病は冠動脈疾患を始めとする動脈硬化性疾患の強力な危険因子であり、動脈硬化のその他の危険因子を同時に有する事も多い。さらに冠動脈疾患などの進行は大動脈瘤の有病率とも正の相関をすることがわかっている。それにもかかわらず、糖尿病と大動脈瘤においては負の相関関係があることも注目されている。本研究では冠動脈疾患患者においての糖尿病の有無での大動脈径への影響やその他臨床的意義について検討した。 冠動脈疾患患者において、治療前後とその一年後以降の2点以上でCTを撮像した患者に関して、腹部大動脈径ならびに石灰化の程度、その時系列での変化を観察した。その結果、カテーテル治療前後の時点で、腹部大動脈径は糖尿病患者において有意に小さいことが確認されたが、石灰化の程度においては有意な差を認めなかった。一方、その後の変化においては、径の年次変化率については、糖尿病の有無により有意な差を認めなかったが、石灰化の進行については糖尿病患者において有意に大きかった。これらの結果から、糖尿病の大動脈血管壁に対する影響は、その血管の動脈硬化進展の過程の中で変化しうることが考えられた。 また冠動脈疾患患者において握力が低値であることや頸動脈に混在型のプラークを有する患者は糖尿病を有する患者が多かったが、その後の心イベントの発生の有意な予測因子であった。 さらに、冠動脈疾患患者の中で糖尿病、大動脈に関連しうる生理活性物質に注目し、血行再建の時相での計測を行ったが、大動脈径との関連は認めなかった。 今回の一連の検討の中で、糖尿病に伴う動脈硬化進展の経時的過程の一部、特にその時相も重要性であることが示唆された。
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