2019 Fiscal Year Research-status Report
心筋疾患におけるマイオカインの病態生理学的意義解明と治療応用のための基盤研究
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19K17592
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥村 貴裕 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (60635598)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マイオカイン / 心筋疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋由来の生理活性物質であるFollistatin-like 1(FSTL-1)は、心筋虚血動物モデルを用いた最近の研究で、細胞死抑制作用や抗炎症作用を介して心臓保護的に働くことが明らかとなった。そこで研究代表者らは、FSTL-1濃度が心筋疾患における心負荷や心不全重症度を反映し、心筋疾患の予後に関与するとの仮説を立てた。本研究の目的は、拡張型心筋症(DCM)患者における血中FSTL-1の動態を把握し、既知の臨床指標や臨床的予後との関連を検討することである。研究代表者らは、DCM患者32例を対象とし、心臓カテーテル検査時に大動脈洞、冠静脈洞、末梢静脈より血液検体を採取し、FSTL-1を計測した。各血中濃度とバイオマーカーや血行動態指標、予後との関連を検討した。平均年齢は58歳、72%が男性であった。ベースラインの左室駆出率は31%、BNP値は237pg/mLであった。冠静脈洞と大動脈洞との経心臓FSTL-1濃度差(TCG)は、BNP、トロポニンTおよび高感度CRPとの間に有意な相関はなかった。また、心エコーでも、TCGは左室拡張末期径、左室駆出率、左室心筋重量係数およびE/e’の間に有意な相関はなかった。カテーテルを用いた血行動態データでは、TCGは、肺動脈楔入圧、平均肺動脈圧および右心房圧と有意な相関を認めた。いっぽう、心係数との有意な相関はなかった。生存解析では、低TCG群は、高TCG群と比較して、心イベントが高率であった。多変量解析では、低TCG群は心イベントの独立した予測因子であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らは、FSTL-1濃度が拡張型心筋症(DCM)における心負荷や心不全重症度を反映し、心筋疾患の予後に関連するとの仮説を立て、FSTL-1濃度と血行動態指標および臨床予後との関連検討を計画した。これまでに、DCM患者における経心臓FSTL-1濃度差(TCG)と心イベントとの関連が明らかになった。このため、当初の仮説が検証でき、本研究は概ね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者らは、これまでに拡張型心筋症(DCM)患者における経心臓FSTL-1濃度差(TCG)と臨床予後との関連を示した。今後は、心筋生検にて採取した心筋検体を用いて、TCGと心筋線維化およびFSTL-1発現との直接的な関連を評価する予定である。最終年度においては、当初の仮説を検証すべくさらなる症例数の確保に努め、組織構造的変化との関連検討を進める方針である。また、これまでに得られた成果を学会発表や論文等で公表する。
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Causes of Carryover |
本年度、拡張型心筋症(DCM)における経心臓FSTL-1濃度差(TCG)とバイオマーカー、血行動態指標との関連を検討し、さらに臨床予後との関連を示したが、現時点では研究成果を公表できていない。また、心筋の構造的解析として、TCGと心筋線維化率、FSTL-1発現量との直接的な解析ができておらず、同解析および研究成果公表のための未使用額が生じた。 (使用計画)上記理由により、さらなる検討症例数の確保を行うとともに、TCGと心筋FSTL-1発現量、心筋の組織構造的変化の関連解析を進め、得られた成果を学会や論文等で広く公表する予定である。昨年度からの繰り越し費用をこれに充てる。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Usefulness of the plasma branched-chain amino acid/Aromatic amino acid ratio for predicting future cardiac events in patients with heart failure2020
Author(s)
Hiraiwa Hiroaki, Okumura Takahiro, Kondo Toru, Kato Toshiaki, Kazama Shingo, Ishihara Toshikazu, Iwata Etsuo, Shimojo Masafumi, Kondo Sayano, Aoki Soichiro, Kanzaki Yasunori, Tanimura Daisuke, Sano Hiroaki, Awaji Yoshifumi, Yamada Sumio, Murohara Toyoaki
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Journal Title
Journal of Cardiology
Volume: 75
Pages: 689-696
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Pathological changes of the myocardium in reworsening of anthracycline-induced cardiomyopathy after explant of a left ventricular assist device2020
Author(s)
Hiroaki Hiraiwa, Takahiro Okumura, Shinya Shimizu, Yoshihito Arao, Hideo Oishi, Hiroo Kato, Tasuku Kuwayama, Shogo Yamaguchi, Tomoaki Haga, Toru Kondo, Naoaki Kano, Naoki Watanabe, Kenji Furusawa, Akinori Sawamura, Ryota Morimoto, Kazuro Fujimoto, Masato Mutsuga, Akihiko Usui, Toyoaki Murohara
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Journal Title
Nagoya Journal of Medical Science
Volume: 82
Pages: 129-134
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Transcardiac Gradient of Follistatin-like 1 Perdicts Future Cardiac Events in Patients with Non-ischemic Dilated Cardiomyopathy2019
Author(s)
Hideo Oishi, Takahiro Okumura, Koji Ohashi, Yuki Kimura, Shingo Kazama, Naoki Shibata, Yoshihito Arao, Hiroo Kato, Tasuku Kuwayama, Shogo Yamaguchi, Toru Kondo, Hiroaki Hiraiwa, Ryota Morimoto, Noriaki Ouchi, Toyoaki Murohara
Organizer
第23回 日本心不全学会学術集会