2020 Fiscal Year Annual Research Report
メタボローム解析によるアルドステロン産生腺腫の治療標的因子や診断マーカーの開発
Project/Area Number |
19K17600
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小武家 和博 広島大学, 医系科学研究科(医), 寄附講座助教 (80805648)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メタボローム / アルドステロン / 原発性アルドステロン症 / 二次性高血圧 / アルドステロン産生腺腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,アルドステロン産生腺腫 (APA) に認めるイオンチャネルやポンプの体細胞遺伝子変異が,アルドステロン合成を促進する分子機序を明らかにすることを目的に,メタボローム解析を主軸におき,アルドステロン合成にかかわる細胞内代謝変化の分析を行った.APAにみられる体細胞遺伝子変異の一つであるATP1A1遺伝子変異に着目し,副腎癌培養細胞株に変異ATP1A1遺伝子を導入し,APAモデル細胞株を得た.このモデル細胞のRNA-Seqならびにメタボローム解析を行い,遺伝子発現の変化および細胞内代謝の変化を解析した.その結果,メタボローム解析において,ATP1A1変異をもつAPAは,核酸合成が盛んな際に低下するPhosphoribosyl Diphosphate (PRPP) が著明に低下していることを得た.PRPPの30-40%は核酸合成に利用され,10-15%がヒスチジンやトリプトファン合成に用いられるが,ATP1A1変異をもつAPAにおいて,ヒスチジンやトリプトファン値に変化なく,核酸合成が促進されていることが示唆された.RNA-Seqにおける遺伝子発現の変化も,この結果と矛盾しないものであった.DNA合成が盛んになることはすなわち細胞増殖の活性化を意味しており,副腎皮質細胞にATP1A1変異が入ることにより,細胞増殖が促進され,APA腫瘍形成の引き金となっている可能性が示唆された.APAにおいてアルドステロン産生機構への理解は深まりつつあるが,腫瘍形成機構の解明につながる知見は未だ少なく,今回の知見を踏まえ,APA腫瘍形成の分子メカニズムが明らかになれば,APA治療,あるいは予防につながる発見にも発展し得る.
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