2021 Fiscal Year Research-status Report
Preventive effect on postoperative atrial fibrillation and stroke by ablation of the ligament of Marshall and amputation of the left atrial appendage
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19K17615
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
遠藤 大介 順天堂大学, 医学部, 助教 (50815644)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心房細動 / 脳梗塞 / 左心耳 / 冠動脈バイパス術 / 慢性腎臓病 / 透析 / Marshall靭帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究課題として、慢性腎臓病、特に透析症例に対する左心耳切除の心房細動に与える影響を検証した。 日本における慢性腎臓病患者数は増加し、透析患者は34万人に達した。透析患者では心房細動の発症率が高いことは報告されているが、出血リスクの懸念から抗凝固薬の開始・継続が困難であることが少なくない。透析症例の関心術においては、左心耳マネジメントの意義は高い。しかし、左心耳切除の有害事象として心房細動が増加する報告がある。今回、透析症例に対して左心耳切除が術後の心房細動に及ぼす影響に関して調べた。 2002年から2020年の間に当院で手術を実施した初回冠動脈バイパス術で、術前洞調律である2691例を対象にした。平均追跡期間は7.3年。CKDステージに分類すると、G1: 353例 (13.1%)、G2: 1257例 (46.3%)、G3: 732例 (27.2%)、G4: 98例 (3.6%)、G5: 261例 (261%)である。術後15年の心房細動回避率はそれぞれ86.9%, 86.9%, 82.6%, 86.8%, 68.5%とG5グループで低い。非左心耳切除群においてはG1-4グループに対してG5グループの心房細動発症率は有意に高いが(術後10年心房細動回避率:93.1% vs. 79.6%, p=0.01)、左心耳切除群においてはG1-4とG5グループの心房細動発症率は差がない(術後8年心房細動回避率:93.8% vs. 97.3%, p=0.91)。したがって冠動脈バイパス術における同時左心耳切除術は透析症例に対する心房細動抑制効果を有することが示唆された。 左心耳切除による左房容量の減少や内分泌機能の変化などが透析患者に対してどのように作用して術後心房細動を抑制したのかを今後検証する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
透析症例に対する左心耳切除の心房細動抑制効果に関しては、2021年European Association for Cardio-Thoracic SurgeryのAnnual Meetingに演題採択され、oral presentationを行った。 本年度は左心耳切除前後による内分泌機能の変化とMarshall靭帯切除の影響を調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
関心術後の合併症として脳梗塞は後遺症による社会的損失が大きいことから、回避すべき重大な合併症である。心原性脳塞栓症は脳梗塞全体の20-25%を占め、心房細動の90%は左心耳内に血栓を生じることが報告されている。心房細動を抑制することとともに開心術における左心耳マネジメントは重要な意義があり、注目度が高い。 2021年にNew England Journal of MedicineにLAAOS IIIが掲載され、心房細動症例に対する同時左心耳切除術が脳梗塞予防に対して有効であることが報告された。開心術後は20-50%の頻度で心房細動を生じ、多くは一過性であるが、遠隔期における心房細動発症率は高いことが報告されている。我々は術前洞調律症例を対象に冠動脈バイパス術における同時左心耳切除術が脳梗塞を抑制することを報告した。 一方で左心耳切除による有害事象に関しては、術中出血のリスクを除いて、中長期成績における左心耳切除による影響を示すevidenceは乏しい。本研究では、左心耳切除前後のhANPやレニンアンジオテンシン系といった内分泌機能に対する影響を調べる。 術後の心房細動は最も頻度の高い合併症であり、入院期間の延長や医療コストの増大に寄与する。術後心房細動の原因は多因子であるが、その一つに交感神経・副交感神経活動亢進の関与がある。心臓の内因性自律神経の神経節が分布するMarshall靭帯を切除することにより術後の心房細動が抑制できるか調べる。
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Causes of Carryover |
2020-2021年の国際学会は全てオンライン会議であったため旅費などの費用は発生しなかった。 術前後の内分泌ホルモン測定(ACTH、コルチゾール、hANP、レニン活性、レニン定量、アルドステロン、CA3分画)の費用、国際学会発表に関与する旅費や参加費、統計会ソフトの購入、データ入力補助に関わる人件費への使用を予定している。
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Research Products
(1 results)