2019 Fiscal Year Research-status Report
アンジオテンシンII受容体拮抗薬/ネフリライシン阻害薬の動脈硬化抑制メカニズム
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19K17618
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
末松 保憲 福岡大学, 医学部, 助教 (70716927)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アンジオテンシンII受容体ネフリライシン阻害薬 / 動脈硬化モデルマウス / アポEノックアウトマウス / 左室収縮能保護作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアンジオテンシンII 1型受容体拮抗薬バルサルタンとネフリライシン阻害薬サクビトリルを組み合わせた薬剤(ARNI)の動脈硬化抑制メカニズムについて検証する基礎研究である。2019年度はARNIの抗動脈硬化作用を明らかにするための動物実験を行った。 繁殖した雄性アポEノックアウトマウスを使用して、16週間高脂肪食を負荷して動脈硬化モデルマウスを作製した。4週間経過した後から、マウスを4群に分け、薬剤としてARNI 60 mg/kg、バルサルタン30 mg/kg、サクビトリル30 mg/kgをコーン油に懸濁して、コントロールにはコーン油のみを12週間毎日強制経口投与した。血圧を定期的に評価したが、コントロール群においても、有意な血圧上昇は見られなかった。動脈硬化は、実験終了後に大動脈をオイルレッドO染色して評価したが、平均16.3±5.8%の動脈硬化しか形成されず、各群間でも有意差は認めなかった。このモデルでは、高血圧、動脈硬化共にあまり進行しなかった。ただ、心機能においては、左室収縮能がコントロール群で軽度低下しており、ARNI群では有意に保持されていた。その機序として、左室の各種マーカーのmessenger ribonucleic acidの発現量をreal-time polymerase chain reactionで評価したところ、線維化、心肥大、炎症マーカーでは有意差を認めなかったが、vascular endothelial growth factor A、 clusters of differentiation 34といった血管新生能のマーカーが、コントロール群と比較して、ARNI群で有意に高発現していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初アポE欠損マウスを使用して動脈硬化モデルマウスを作製する予定であったが、購入予定業者において、コンタミネーションが起こり種の系統が保証できないとして、販売中止となった。そのため、本実験はアポEノックアウトマウスを使用して行うこととした。また、アポEノックアウトマウスも別業者から購入しようとしたが、今後販売中止となるとのことであり、自施設での繁殖分のみ購入し、自分たちで繁殖して実験動物を確保することとなった。そのため、実験計画は遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、重症度の強い動脈硬化モデルマウスを作製するために、高脂肪食の脂肪割合を増やして再実験する方針である。その際得られる血液検体を使用して、HDLコレステロールの機能を評価していく。また、再実験において、ARNIの抗動脈硬化作用が認められれば、脂肪細胞褐色化作用の関与を解明するために、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた細胞実験を行っていく。
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Causes of Carryover |
2019年度に施行した動物実験において、予定していたアポE欠損マウス購入費用が不要となり、また、病理標本作製費も減額したために次年度使用額が生じた。2020年度に施行する、より重症度の強い動脈硬化モデルマウスでの動物実験の費用として使用する。
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Research Products
(1 results)