2020 Fiscal Year Research-status Report
ストレス負荷を模した視床下部電気刺激による延髄交感神経中枢の興奮遷延機構の解明
Project/Area Number |
19K17620
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Research Institution | National Hospital Organization Murayama Medical Center |
Principal Investigator |
河野 洋介 独立行政法人国立病院機構村山医療センター(臨床研究部), 電気生理学研究室, 共同研究員 (00747454)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 循環調節 / 延髄 / 視床下部 / 膜電位イメージング / グリア細胞 / 摘出視床下部脳幹脊髄標本 / 高血圧症 |
Outline of Annual Research Achievements |
高血圧症は心血管疾患の最大のリスク因子であるが、本態性高血圧発症のメカニズムは明らかでない。身体的あるいは精神的ストレスを受けると血圧上昇・心拍数増加といった循環応答が惹起されるが、ストレス消失後にもこれらの循環応答が遷延する場合には、将来、高血圧を発症するリスクが高まることが報告されている。 研究代表者は、本研究において、摘出視床下部脳幹脊髄標本を用いた膜電位イメージング法により、視床下部背内側核への電気刺激が、吻側延髄腹外側野や吻側延髄腹内側野・尾側延髄腹外側野・延髄縫線核といった、延髄腹側循環調節領域における興奮を惹起させることを示した。また、視床下部背内側核におけるテタヌス電気刺激はそれらの延髄腹側循環調節領域における遷延性興奮を惹起することを明らかにした。神経トレーサーを用いた神経解剖学的検討では、視床下部背内側核の神経細胞が延髄腹側の吻側延髄腹外側野や吻側延髄腹内側野・尾側延髄腹外側野・延髄縫線核へ投射していることを明らかにし、また、視床下部背内側核の神経細胞に注入した順行性神経トレーサーは、延髄腹側の交感神経中枢においてチロシンハイドロキシラーゼ陽性細胞近傍に分布することを明らかにした。 これらの実験の成果を、2020年に論文として学術誌『Scientific Reports』に報告した。 一方、視床下部背内側核におけるテタヌス電気刺激が延髄腹側循環調節領域における遷延性興奮を惹起する機序については十分に解明できていない。そこで、近年、神経科学の分野でその機能が注目されつつある、脳神経学的領域におけるグリア細胞の役割に着目した。これまでに生理学的実験を用いて、急性ストレス刺激投与時におけるアストロサイトやマイクログリアの抑制による循環応答の変化を観察し、それぞれのグリア細胞が担う役割について解析し、一定の見解を得つつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は生理学的実験を中心に研究の進行を予定していたが、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行による影響により、実質的な研究が困難であったため、研究計画に遅れを生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、生理学的実験の例数を増やし、各グリア細胞が担う循環応答における役割を明らかにすることを目指す。また、視床下部へのテタヌス刺激が延髄交感神経における遷延性興奮を起こすメカニズムの解明のため、膜電位イメージング実験と同様の実験を、カルシウムイメージング法を用いて行い、視床下部テタヌス刺激時の腹側延髄のニューロンおよびアストロサイトの活動変化をカルシウムイメージング法により解析する。
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Causes of Carryover |
2020年度は予定していた研究計画の多くが実行できず、次年度使用額が生じた。 2021年度は遅延している生理学的実験およびカルシウムイメージング法を用いた実験を行う予定で、そのための物品資材の購入費用として計上する。
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Research Products
(7 results)