2019 Fiscal Year Research-status Report
トリプトファン代謝物の網羅的解析による免疫療法のバイオマーカー開発
Project/Area Number |
19K17631
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
柄山 正人 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90748071)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント阻害剤 / バイオマーカー / トリプトファン / 肺がん / PD-1 / PD-L1 |
Outline of Annual Research Achievements |
19例のPD-1/L1阻害剤の投与を受けた進行肺がん患者において、血漿を用いてトリプトファン代謝産物の網羅的解析を行った。17の代謝産物のうち、2つ(5-HydroxytryptopholとTryptophol)は全例で測定不能だったが、15の代謝産物は、概ね測定可能であった。そのうち、tryptophan、kynurenic acid、3-hydroxykynurenine、xanthurenic acidは健常者と比較して有意に低く、serotonin、5-hydoxyindoleacetic acid、3-hydroxyanthranilic acid (3-HAA)、quinolinic acidは有意に高かった。 それらの代謝物の中でも、3-HAAの低値例はPD-1/L1阻害剤の奏功率が有意に高く、無増悪生存期間が有意に長かった。ROC解析で求めた3-HAAのカットオフを用いた場合、奏功予測の感度が87.5%で特異度は83.3%であった。従来の標準的な有効性予測マーカーである腫瘍のPD-L1発現(TPS>50%)の奏功予測の感度は70%で特異度は77.8%であったが、3-HAAとPD-L1発現を組み合わせた場合(いずれかが陽性であった場合)、感度は100%で特異度71.4%と、検査精度が向上した。 その他の代謝産物にも、PD-1/L1阻害剤の有効性と一定の関連を示唆するものがあったが、症例数の関係もあってか、統計学的な有意差を示したものはなかった。 PD-1/L1阻害剤投与後、いくつかの代謝産物には変化が見られ、特に3-hydrocykynureninおよび3-HAAは投与後に有意な変化が見られた。3-hydrocykynureninはPD-1/L1阻害剤の有効例で上昇し、3-HAAは無効例で上昇する傾向を示したが、いずれも統計学的な有意差は示さなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IRBの申請と承認が得られ、対象となる患者の同意取得など問題なく行っている。対象者の末梢血サンプリングと血漿分離も問題なく行えている。LC/MS/MSを用いたトリプトファン代謝産物の測定に関しても、いくつかの代謝物は測定感度以下であるが、ほとんどの代謝物で測定が可能である。その中でもPD-1/L1阻害剤の有効性と関連する複数の代謝産物を見いだすことが出来でいる。また、現在の症例数では有意差を示さないものの、一定の傾向を示すその他の代謝産物も見いだせているため、今後の症例の蓄積でそれらの代謝物と有効性の関連性も示せる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、症例を蓄積し、臨床経過、アウトカムを記録していく。また、血清を用いた場合と血漿を用いた場合のトリプトファン代謝物の差異を確認していく予定である。これは、実臨床での利用を考えた場合に血清の方が取り扱いが容易であること、また、PD-1/L1阻害剤投与患者の他の観察研究において採取された保存血清があるため、それらの測定が可能になれば、より広範囲の情報が速やかに入手できるためである。こちらも並行して行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
症例登録が予定より少なく、測定費用が予定より少なかったため。次年度は血漿での測定に加え、血清の測定も予定し、過去の保存血清の利用なども行って測定例を増やして予定通りの進捗を目指す。
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