2019 Fiscal Year Research-status Report
肺線維症肺線維芽細胞の機能解析から新規抗線維化薬創薬への展開
Project/Area Number |
19K17647
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小山 良 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10365611)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 特発性肺線維症 / 肺線維芽細胞 / トランスフォーミング増殖因子β (TGF-β) |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症は慢性炎症による肺胞上皮傷害と肺間質の線維化によりガス交換障害を来す進行性の難治性疾患である。肺間質の線維化はTGF-β等の増殖因子により線維芽細胞の増殖・遊走が亢進し、細胞外基質の過剰沈着による組織収縮を引き起こすことで生じる。 本研究では肺線維化病態の主座となる肺線維芽細胞に着目した。肺線維症患者から分離培養した肺線維芽細胞を用いて生理機能解析を行い肺線維症の病態を解明すること、肺線維症線維芽細胞の新たな機能制御因子を明らかにし新規抗線維化薬の開発へとつなげることを目的とした。 肺線維症患者の手術検体から分離培養した肺線維芽細胞を用いて、線維化病態のin vitroモデルであるCollagen gel contraction assayとChemotaxis assayで生理機能解析を行い、ヒト正常肺線維芽細胞との比較検討を行った。正常肺線維芽細胞群と比較して肺線維症肺線維芽細胞では、TGF-β刺激に対する反応性がより亢進していることが確認された。 脂質メディエーターAは細胞の増殖・遊走、線維化などの作用を持っており、近年、肺線維症において重要な役割を担うことが解明されつつある。脂質メディエーターAとその合成酵素Bに着目し、ヒト胎児肺線維芽細胞(HFL-1)で予備実験を行った。HFL-1を用いてCollagen gel contraction assayとChemotaxis assayを行い、脂質メディエーターAと合成酵素Bの線維化病態への関与を検証した。脂質メディエーターAの刺激によってHFL-1のCollagen gel収縮・遊走が亢進し、それがA受容体拮抗薬またはB阻害剤によって抑制された。TGF-β刺激により亢進したCollagen gel収縮と遊走が両薬剤により抑制された。これはTGF-β刺激が脂質メディエーターA経路の活性化を示唆する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト胎児肺線維芽細胞(HFL-1)を用いた予備実験での新規抗線維化薬候補探索に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、肺線維症線維芽細胞を用いて、脂質メディエーターA受容体拮抗薬または合成酵素B阻害剤に対する反応性やA受容体の発現を解析し、正常肺線維芽細胞との比較によって、新規抗線維化薬の標的因子や効果予測因子を明らかにする。また、肺線維症線維芽細胞から分泌される脂質メディエーターAを液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(Liquid Chromatograph-tandem Mass Spectrometry: LC-MS/MS)で定量し、TGF-β刺激や各阻害剤による脂質メディエーターA分泌量の増減をみることで、線維芽細胞活性化に寄与していることを明らかにする。更に、肺線維症線維芽細胞のマイクロアレイ解析を行い、肺線維症表現型別の線維化促進因子を探る。
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Causes of Carryover |
ヒト胎児肺線維芽細胞(HFL-1)を用いた予備実験での新規抗線維化薬候補探索に時間を要し計画がやや遅れた。2020年度は、肺線維症線維芽細胞を用いて各阻害剤に対する反応性やA受容体の発現を解析し、新規抗線維化薬の標的因子や効果予測因子を明らかにする。また、肺線維症線維芽細胞から分泌される脂質メディエーターAをLC-MS/MSで定量し、TGF-β刺激や各阻害剤による脂質メディエーターA分泌量の増減をみることで、線維芽細胞活性化に寄与していることを明らかにする。更に、肺線維症線維芽細胞のマイクロアレイ解析を行い、肺線維症表現型別の線維化促進因子を探る予定である。
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