2019 Fiscal Year Research-status Report
新規ニューモシスチス肺炎モデルマウスの確立と発症に寄与する免疫不全機構の解明
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19K17650
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
三好 嗣臣 東邦大学, 医学部, 助教 (60833192)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ニューモシスチス肺炎 / マウスモデル / Caspase8 / Ripk3 / アポトーシス / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
DKOマウスに発症している肺炎の起因菌がニューモシスチスであるかどうかを確定させるため、組織染色とニューモシスチスに対するPCRを行った。グロコット染色とPCRの結果から、肺炎を起こしている菌はニューモシスチスと考えられ、複数のマウスにおいて再現性を確認できた。さらにダイレクトシーケンスも行い、菌体はPneumocystis murinaであることが確定した。発症したマウスは30週齢以上での発症が大半であり、加齢とともに発症確率が上昇すると考えられ、Pneumocystis murinaに対するqPCRを行ったところ、週齢とともに値が上昇し、週齢との相関関係が見られた。また本マウスに類似した表現型を呈するlprマウスを用いて30から40週齢まで観察したが、ニューモシスチス肺炎は1例も発症しなかった。よって肺炎の自然発症は本マウスに特異的な現象の可能性が高い。 本マウスは加齢とともに再現性をもってニューモシスチス肺炎を自然発症するが、加齢をまたずして発症させるために、感染マウス肺を処理して菌体を回収し、若齢マウスへ気管内投与をおこなった。しかし8週間経過した後に解剖し観察したところ、肺炎を発症させることはできていなかった。 若齢DKOマウスの表現型の解析としては、肺、脾臓、リンパ節、骨髄、血液を用いてフローサイトメトリー解析を行った。特にリンパ節と脾臓においては顕著な肥大がみられ、CD3(+)B220(+)の異常リンパ球の割合が増加していた。血中の白血球数とHb値は低下しており、造血障害の所見がみられた。 DKOマウスの感染肺をもちいた電子顕微鏡の観察では、肺胞内に存在する菌体の大多数が栄養体であり、Ⅰ型肺胞上皮細胞に付着している像が観察され、宿主細胞の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ肺炎のため制限もあり、やや遅れているが順調に進展している。 菌体の気管投与で自然発症させるモデルは、そもそも菌体の処理方法が確立されておらず、さらに菌の生死の確認方法がないことから非常に難渋している。培養方法が確立されていない菌であり、菌を維持する方法もないことから新たな方法を探している状態である。 一方でマウスの表現型解析や感染モデルとしての確立は前進できており、おおむね順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は老齢マウスにおける表現型解析や網羅的解析による比較を行い、肺炎発症に寄与する機構を解析していく。若齢マウスにおける網羅的解析の比較が、発症に寄与する遺伝子を含んでいると考えられるため解析を進めていく予定である。 ヒトのニューモシスチス肺炎における代表的な基礎疾患は、HIV感染症である。本マウスの組織像では多量の菌体が観察され、HIV感染者に発症するニューモシスチス肺炎と類似している。獲得免疫系の異常が発症に寄与するとされ、疲弊マーカーを発現してくるとされる。肺炎を発症した老齢マウスにおいて、上記の疲弊マーカーを解析し、さらに肺炎を発症していない老齢マウスとの比較を行うことで、どの因子が発症に寄与しているのかを解析する。 また、骨髄移植を行ったマウスにおいてもニューモシスチス肺炎を自然発症するかどうかを確認する。骨髄移植によって肺炎を発症しなくなるのであれば、骨髄由来細胞が肺炎発症に寄与している可能性が極めて高くなる。逆に自然発症するようであれば、上皮系細胞などの異常が肺炎発症に寄与するものと考えられる。
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Causes of Carryover |
RNAシーケンスによる解析を行う3検体予定であったが、抽出したRNA検体が不良であったため、中止となり次年度使用額が生じた。肺炎を発症していない老齢マウス肺を用いてシーケンスを行う予定であったが、発症しない老齢マウスを作成するために時間を要することや意図せず発症してしまう等の問題があり、作成が容易ではない。再度作成可能であった場合に、RNAシーケンス解析を試みる予定である。 次年度は、上記に記載したRNAシーケンス費用に加え、感染マウスに対するFACS、免疫染色、PCRのための試薬や消耗品、解析費、論文投稿のための費用に使用する予定である。
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