2019 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザ感染後の肺組織における交差防御抗体の産生機序の解明
Project/Area Number |
19K17656
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
安達 悠 国立感染症研究所, 免疫部, 主任研究官 (40749016)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 交差防御抗体 / インフルエンザウイルス / ユニバーサルワクチン / B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗原変異インフルエンザウイルスにも有効な“交差防御抗体”の誘導を目的としたユニバーサルワクチン開発が、近年精力的にに進められている。申請者はこれまでウイルス感染後の交差反応性B細胞の発達について研究を進めてきた知見を元に、従来HAスプリットワクチンに簡便な処理を施すことで抗原構造を変化させ、交差防御抗体を効率的に誘導可能な新規ユニバーサルワクチン剤形(膜融合型HAスプリットワクチン)の提案に成功している。そこで本研究では、新たなワクチンデザイン戦略における科学的基盤の整備に向け、生体内における抗原の構造変化に焦点を当て、肺組織にユニークな交差反応性B細胞の選択機序の解明を目的として研究を進めた。 本年度では、生体内において抗原構造の変化を検証するため、抗原特異的B細胞のシングルセル培養システムを用いて、ウイルス感染後の各組織(肺、リンパ節、脾臓)で選択された交差反応性B細胞の大規模モノクローナル化(各200クローン程度)を行った。得られた交差モノクローナル抗体の、通常HA・膜融合型HA抗原への結合度を比較検証したが各組織間において結合度に差は見られなかった。そこで更に株特異的(交差反応性の無い)B細胞のシングルセル培養を行い、株特異的モノクローナル抗体の通常HA・膜融合型HA抗原への結合度を調べた結果、株特異的抗体においても膜融合型HA構造により強く結合する複数クローンが肺組織で確認できたものの、組織間での結合度の有意な差は見られなかった。 そこで次に、抗原提示細胞(濾胞樹状細胞)上における抗原の構造を直接的に検証するために、濾胞樹状細胞の調整・単離条件を検討した。これまでの報告のあるマーカーCD45-, CD21+に加え、FDC-M2, PDPN, CD31, ICAMで更に細胞集団の細分化を行い、フローサイトメトリでモデル抗原(PE)が細胞上に存在することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、当該年度内に2つのアプローチ(シングルセル培養システムによるB細胞レパトアによる間接的検証、および濾胞樹状細胞上の抗原の直接的検証)を行う予定であった。しかし、B細胞レパトアの検証における当初予定していなかった株特異的レパトアの追加および、濾胞樹状細胞の単離条件の検討に想定以上の時間を費やしたため、当初の予定より遅れた生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度においてウイルス感染後の各組織で選択されるB細胞のモノクローナル抗体を得たため、通常・膜融合型HA構造への結合度だけではなく、他の抗原構造(抗原エピトープを合成したペプチド等)への結合を検証し、各組織において選択されているB細胞レパトアと、抗原構造の関係を検証していく。それでも明確な差異が観察しづらい場合、シークエンシングによるレパトア解析を検討する。 さらに、濾胞樹状細胞の単離条件が整ったため、当初の計画通り、ウイルス感染後の濾胞樹状細胞における抗原の検出を試みる。
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Causes of Carryover |
(理由)年度末納品等にかかる支払いが令和2年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。令和1年度分についてはほぼ使用済みである。
(使用計画)上記の通り。
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