2019 Fiscal Year Research-status Report
肺癌におけるプロレニン受容体の発現と生理機能の解明
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19K17661
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大場 浩史 東北大学, 医学系研究科, 助教 (70726710)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロレニン受容体 / オートファジー / 増殖 / 遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、肺腺癌を対象としてプロレニン受容体(PRR)の機能解析を実施した。肺腺癌組織におけるPRRの発現を免疫組織化学的に検討したところ、対象とした全症例に発現が認められ、症例ごとで免疫応答性に違いが見られた。正常組織の免疫応答性を基準として、2群に分類し増殖のマーカータンパクとの関連を統計学的に解析した。そして、PRRの発現が増強している群では、癌細胞の増殖が活発である可能性を示唆する結果が得られた。 培養細胞を用いた実験では、PRRの発現を抑制することによって、肺腺癌細胞の増殖と遊走が抑制される結果を得た。オートファジーとの関連性を明らかにするため、複数のオートファジー阻害剤とその効果を比較検討した。そして、PRRの発現抑制は、細胞増殖と遊走に対してオートファジー阻害剤と同程度の抑制効果があることが分かった。また、オートファジーのマーカータンパクとされているLC3とp62の発現変化をウエスタンブロット法と免疫細胞化学で解析した。ウエスタンブロット法では、PRRの発現抑制、オートファジー阻害のいずれも細胞内にLC3とp62のタンパクの蓄積が観察された。免疫細胞化学による解析では、PRRの発現抑制とオートファジー阻害剤によって、細胞内に顆粒状のLC3とp62の免疫応答性が増強することを明らかにすることができた。 以上の結果から、PRRはオートファジーの調節を介して、肺腺癌の病態進行させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺腺癌を対象とした実験から、プロレニン受容体が肺腺癌細胞のオートファジーを制御していることを明らかにすることができた。そして、プロレニン受容体が肺腺癌細胞の増殖や遊走に必要な因子であり、肺腺癌組織の解析からも、肺腺癌の増悪を促進している可能性を示唆する結果を得ることができた。また、オートファジーを評価するうえで有効な実験系を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
肺腺癌においてプロレニン受容体の機能を明らかにすることができた。今後は、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌についても解析を行い、肺癌におけるプロレニン受容体の機能を明らかにしていく。また、本年度はPRRと細胞内シグナル伝達との関連についても解析を行う予定である。
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