2019 Fiscal Year Research-status Report
組織透明化技術と多光子励起顕微鏡を用いた肺高血圧症の三次元病理病態解析
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19K17667
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 隆行 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (40836441)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 血管新生 / 組織透明化技術 / 肺高血圧症 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺高血圧症モデルマウスにおける血管新生およびVEGFシグナルについての検討を行った。組織透明化技術および多光子顕微鏡を用いた予備検討で、中等度の肺高血圧症を呈する低酸素負荷肺高血圧症モデルマウスでは肺末梢方向への微小血管新生を認めていたが、同様に中等度の肺高血圧症を呈する遺伝性肺高血圧症モデルAlk1+/-でも同様の所見を認め、その背景因子であるVEGFは上昇していた。その一方で、低酸素負荷+VEGF受容体阻害薬(Sugen)投与モデルでは、血管新生像は認めず、VEGFは上昇せず、重症肺高血圧症を呈した。このことより、VEGF上昇およびそれによって引き起こされる血管新生は、肺高血圧症における代償機転であることが示唆された。 また肺高血圧症において微小血管リモデリングが肺胞実質に対してどのような影響を及ぼしているかについて検討を行った。微小血管リモデリングに対応するように肺胞上皮もリモデリングしており、低酸素負荷+Sugen投与モデルでは低酸素負荷肺高血圧症モデルおよび遺伝性肺高血圧症モデルAlk1+/-と比較して、II型肺胞上皮細胞の幹細胞機能の賦活化(I型肺胞細胞への分化)が顕著であった。この事実は、肺高血圧症における血管新生の有無が肺胞実質のリモデリングに影響しており、血管新生の少ない低酸素負荷+Sugen投与モデルでは、肺血管床が少ないことにより、肺胞障害が生じ、その結果としてII型肺胞上皮細胞の幹細胞機能の賦活化が惹起されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織透明化技術および多光子顕微鏡を用いた三次元イメージングシステムにより、各種肺高血圧症モデルマウスにおける微小血管リモデリングについての描出を可能とした。またそれに引き続く肺胞実質のリモデリングについても描出を可能とし、肺高血圧症における血管新生およびその背景シグナルの意義について示すことが可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
血管新生を引き起こすVEGFの上流にはいくつかの因子があるが、その一つである低酸素誘導因子HIFについては、阻害することにより肺高血圧症が改善することがすでに報告されている。今回の検討ではVEGFの上昇が肺高血圧症の代償となっていることが示唆されるが、HIFとは異なるVEGFの上流に位置する因子Xについて、肺高血圧症における役割を検証し、治療への応用を検討していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により海外輸入を予定していた試薬の到着が大幅に遅れ、当該年度の予算での支払いが困難となったため。各年度別の予算を念頭に置いた物品の購入は予定通りであり、昨年度の納入が遅延した試薬については繰越予算を用いる予定としている。
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