2019 Fiscal Year Research-status Report
肺癌関連線維芽細胞の制御因子の解明から標的治療への展開
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19K17683
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
難波 由喜子 順天堂大学, 医学部, 助教 (90782243)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 癌関連線維芽細胞 / 非小細胞肺癌 / TGFβ1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では非小細胞肺癌の手術肺検体から得られる癌組織から肺線維芽細胞の分離培養を行い非癌部の正常肺線維芽細胞をコントロールとしたCAFの生理機能活性化機序の比較検討を行った。具体的にはCAFの遊走能に着目し生理機能解析を行った。その結果CAFはコントロールと比較し遊走能が亢進していることがわかった。さらにCAFと肺癌細胞の共培養系を構築し癌細胞-CAFの相互作用の検討を行ったところ、CAFは癌細胞と共存することで癌細胞の成長をより促進させている可能性があることがわかった。さらに我々はCAFで亢進している生理機能活性制御因子を同定するために、研究協力施設の理化学研究所においてコントロールとCAF両群のCAGEによる転写活性解析を行った。この結果をふまえ我々はCAFで亢進している制御因子AとBに着目し、制御因子AにおいてはCAFの遊走能に関与していること、制御因子BにおいてはCAF特異的に発現している新規マーカーとして制御因子Aと相同的に発現していることがわかった。またこれらの因子を介するCAFの生理機能活性化機序を解明するため、これらの因子を肺線維芽細胞(HFL-1)に強制発現もしくはノックダウンさせCAFの遊走能の直接的制御因子であることを実証した。また制御因子AはCAFの活性化成長因子であるTGFβ1により発現が上昇するが、TGFβ1の古典的な経路であるTGFβ1-Smad経路に依存するのではなく、ERKシグナルに依存することが判明した。我々は過去に肺線維症の肺線維芽細胞においてもCAGEでの表現型と遊走能を検証したが、肺線維症の肺線維芽細胞とCAFは明らかに表現型が異なる線維芽細胞であり、この違いの理由としてCAFと癌細胞の共培養系の実験結果か癌細胞との相互作用により制御因子ABが誘導された結果起こる現象であることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CAGEによる網羅的プロモーター活性のバイオインフォマティクス解析を行い、コントロールとCAFの表現型の違いを明らかにして、CAFの生理機能に直接関与し得る制御因子AとBを発見した。CAFが癌細胞と共存することで制御因子AとBを介するCAF特異的な活性化シグナル経路を活性化させることで癌進展を促進している可能性があることがわかった。現時点では、In Vitroの研究がほぼ達成段階であり、論文作成に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は新規CAF制御因子候補AとBの肺癌組織中の癌間質における発現量と臨床背景の相関についても免疫組織染色を用いて確認を行い、実際に臨床マーカーとなりうるかどうかについても確認する。またCAFの生理機能活性に関与する制御因子Aを強制発現もしくはノックダウンさせた正常肺線維芽細胞(HFL-1)と肺癌細胞を免疫不全マウスへ共移植させてCAFの発現する特異的制御因子による癌進展の機序をin vivoで検証する。
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Causes of Carryover |
In Vitroの研究計画はおおむね順調に進展しており、次年度の免疫組織染色やIn Vivoを含めた研究資金がより必要であることが想定されるため。また現在論文作成中であり、今後校正や投稿費用にも必要であることが想定されるため。
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