2019 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア脱共役によりエネルギー代謝効率を低下させる新しい肺癌治療法の開発
Project/Area Number |
19K17685
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
岩井 悠希 東京医科大学, 医学部, 助教 (90743302)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腫瘍微小環境 / アシドーシス / EPAC阻害薬 / ESI-09 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍微小環境では低酸素、栄養欠乏およびアシドーシスが生じ、癌細胞は代謝をリプログラムしてこれらの環境ストレスに対応している。アシドーシスに曝露された肺癌細胞は解糖系の抑制、蛋白RNA合成の抑制の2つのエネルギー節約機序を介して栄養欠乏抵抗性を獲得することが明らかになった。その治療薬候補として、EPAC阻害薬がミトコンドリア電子伝達系の脱共役をもたらし、エネルギー代謝を空転させ、細胞内ATPを枯渇させることにより酸性環境下における栄養欠乏抵抗性を改善することが見いだされた。本研究では、肺癌の異種性異所移植マウスモデルを用いてEPAC阻害薬単独及び抗VEGF抗体との併用による抗癌効果を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私たちが発見したESI-09とHJC-0197によるミトコンドリア脱共役作用がEPAC阻害作用によるものかについて確認した。コンフルエントまで増殖したA549及びH1299肺癌細胞を、グルコース存在または非存在下(0-10 mM)の酸性(pH 6.8)または中性(pH7.4)培養液中で培養し、ESI-09とHJC-0197以外のEPAC阻害薬(CE3F4、EPAC1阻害薬;ESI-05、EPAC2阻害薬;GGTI 281、Rap-1阻害薬)を添加して細胞内ATP濃度、グルコース消費量、乳酸産生量、extracellular acidification rate (ECAR)、oxygen consumption rate (OCR)、mitochondrial ATP production、proton leak、coupling efficiency、細胞生存率を測定。CE3F4およびESI-05を用いてもESI-09とHJC-0197と同様な成績が得られ、siRNAを用いたEPAC1、EPAC2遺伝子のノックダウン実験を行い、脱共役作用がEPACの阻害効果を介していることを確認した。 次に肺癌細胞の異種異所性移植マウスモデルを作製し、ESI-09単独および抗癌薬として使用されている抗VEGF抗体 (Bevacizumab; Bev) との併用効果について検討した。A549細胞を免疫不全マウス(NOD-scid)の腋窩皮下に移植して6群に分け、1) 生食(腹腔内投与)、2) Bev(10 mg/kg、1回/週、腹腔内投与)、3)ESI-09 (2 mg/kg、1回/日、腹腔内投与)、4) ESI-09 (10 mg/kg)、5)Bev + ESI-09(2mg/kg)、6) Bev + ESI-09 (10mg/kg)を投与し、腫瘍サイズを連日モニターした。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験でESI-09とBevの相乗効果を期待したが、単独治療で奏功してしまったため、相乗効果が見られなかった。 また、実臨床で使用するためには、安全域の確認も必要であり、それらについて、再度動物実験にて確認していく必要がある。 虚血の癌細胞だけでなく、正常組織の虚血臓器への悪影響も懸念され、さらなる実験を検討していく。
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Causes of Carryover |
論文作成に使用していく。
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