2019 Fiscal Year Research-status Report
マスト細胞由来エクソソームmiRNAによるIL-5産生増強機構の解明
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19K17687
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
豊島 翔太 日本大学, 医学部, 研究員 (30807954)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マスト細胞 / 細胞外小胞 / 2型自然リンパ球 / 2型サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、これまでにIgE依存性の刺激で活性化したヒトマスト細胞から遊離されたエクソソームは、ヒト2型自然リンパ球 (ILC2)からのIL-33依存的なIL-5産生を増強することを見出していた。そこで、IgE依存性に活性化したヒトマスト細胞から遊離されるエクソソームが、ヒトILC2からのIL-5産生を増強させる機序を明らかにすることを目的とした。 IgE依存性に活性化したヒトマスト細胞から遊離されるエクソソーム中には、miR103a-3pの発現が特異的に上昇していることを明らかにしていたので、申請した研究実施計画に沿って、平成31年度 (令和元年度)ではmiR103a-3pがヒトILC2からのIL-5産生にどのような役割を有するかを検証した。ヒトILC2にmiR103a-3p mimicを導入し、miR103a-3pの発現を上昇させ、3日間IL-33で刺激した。細胞上清のELISAを行ったところ、有意なIL-5産生上昇が確認された。この時、IL-13産生の有意な増強は認められなかった。 次に、in silicoでmiR103a-3pの標的となる分子を探索したところ、miR103a-3pはたんぱく質のアルギニン残基をメチル化する酵素のPRMT4, 5および8を標的とすることがわかった。PCRの結果、ヒトILC2はPRMT4および5を発現することがわかった。IgE依存性に活性化したヒトマスト細胞から遊離されるエクソソームと共培養したヒトILC2において、これらの分子の発現への影響をPCRで検証したところ、PRMT4の発現に影響は認められなかったが、PRMT5の発現は有意に抑制された。この抑制が、miR103a-3pによるものかを検証するために、miR103a-3pを過剰発現させたヒトILC2でPRMT5の発現を調べたところ、コントロールと比較して、PRMT5の発現は有意に減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の研究計画通りmiR103a-3pがヒトILC2からのIL-5産生に与える影響を検証した。miR103a mimicの導入により、ヒトILC2からIL-33依存的なIL-5産生の増強を確認できた。さらに、miR103a-3pの標的の候補をin silicoで探索し、PCRを行ったところ、miR103a-3pの標的となりうるPRMT4および5をヒトILC2は発現していることを明らかにした。IgE依存性に活性化したヒトマスト細胞から遊離されるエクソソームとmiR103a mimicの導入実験により、特にmiR103a-3pはヒトILC2において、PRMT5を標的としていることが明らかになった。したがって、本年度の予定していたmiR103a-3pが、実際にヒトILC2からIL-33依存的にIL-5産生を増強させているmiRNAであることを明らかにすることができた。また、その標的がたんぱく質のアルギニン残基をメチル化するPRMT5を標的としていることを発見し、IgE依存性に活性化したヒトマスト細胞から遊離されるエクソソーム中のmiR103a-3pによるヒトILC2からのIL-5産生増強機序の全体像を浮き彫りにできた。また、研究の過程で、IL-33刺激によってヒトILC2がIL-5を産生する際に、PRMT5が重要な役割を担っていることを示唆するデータも得ることができた。したがって、研究は概ね順調に進んでいると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
IgE依存性に活性化したヒトマスト細胞から遊離されるエクソソームとの共培養実験とmiR103a-3pの過剰発現実験によって、IgE依存性に活性化したヒトマスト細胞から遊離されるエクソソーム中のmiR103a-3pがヒトILC2からのIL-5の産生増強に寄与している可能性が示されたが、この実験結果を確証的なものにするために、miRNA103a-3p inhibitorを導入した2型自然リンパ球とIgEと抗IgE抗体で刺激したマスト細胞由来のエクソソームをIL33存在下で共培養し、miR103a-3pによるIL-5産生増強がキャンセルされるかを確認する。また、PRMT5はたんぱく質アルギニン残基をメチル化する酵素である。IL-5が産生される際、転写因子であるGATA3がIL5の転写を惹起する。このGATA3が転写活性を有するようになるには、アルギニン残基のメチル化と脱メチル化が重要であることが知られている。そこで、ヒトILC2において、PRMT5によるGATA3のメチル化がどのようにIL-5産生を惹起するかそしてmiR103a-3pによって、PRMT5の発現が低下することで、そのメチル化にどのような影響を及ぼすかを検証していく。
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Causes of Carryover |
当該年度において、miR103a-3pのヒトILC2からのIL-5産生増強機序を明らかにすることができたので、2020年3月に開催される国際学会のAAAAI annual Meetingで発表を予定していた。しかしながら、COVID-19の世界的な感染拡大によって、学会が中止となったため、翌年度へと繰り越した。この繰越分を加え、miR103a inhibitor実験を行うためのsmall RNAやtrnsfection試薬の購入を予定している。また、PRMT5によるGATA3のメチル化を明らかにするために、該当するwestern blot用の抗体や試薬を購入する。2型自然リンパ球やヒトマスト細胞を培養するための培地やサイトカインを購入する。本計画の中心であるエクソソームを単離する試薬も購入する。
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Research Products
(4 results)