2019 Fiscal Year Research-status Report
腎臓オルガノイド上でのForward Geneticsによる慢性腎臓病機序の解析
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19K17699
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
須佐 紘一郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (50735842)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腎臓オルガノイド / 修飾遺伝子 (modifier gene) / forward genetics / 慢性腎臓病 (CKD) / 常染色体優性多発性嚢胞腎 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内患者数1300万人以上に達する慢性腎臓病(CKD)には、共通現象として間質線維化や嚢胞形成等の尿細管間質病変があるが、その機序は未解明な点が多い。この問題を解決するため、我々はNPHP1、UMOD、PKD1/2等の遺伝子変異により尿細管間質病変を呈する遺伝性腎疾患に注目した。これらは全く同じ遺伝子変異を有しながら重症度の個人差が大きいことから、これらの疾患の重症度を制御する別の修飾遺伝子(modifier gene)の存在が疑われる。この修飾遺伝子がCKDの進行も制御する可能性があるが、その探索は従来の培養細胞や動物モデルでは困難であった。 そこで本研究では、上記遺伝子に変異を持つiPS細胞を作製し、これらのiPS細胞から分化誘導して作製したミニチュア腎臓である腎臓オルガノイドを利用・解析することにより、慢性腎臓病(CKD)を増悪させる修飾遺伝子を同定し、新しい治療法の開発に役立てることを目標とした。 平成31年度には、センダイウイルスベクターを使用して健常者由来iPS細胞の樹立を行った。さらに、上記の遺伝子に変異を持つiPS細胞の作製を進めている。また、線維化した部位を可視化できるようなレポーターの作製も進行中である。今後は、これらの患者由来iPS細胞から作製した腎臓オルガノイドを作製し、レンチウイルス型CRISPRライブラリを用いて各種遺伝子をランダムにノックアウトする等の処理を行って表現型を解析し、CKDの増悪因子の同定や治療法の開発につなげていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
○健常者由来及び尿細管間質障害を起こす遺伝性腎疾患の患者由来iPS細胞樹立と腎臓オルガノイド作成: 健常者由来iPS細胞を、京都大学iPS研究所樹立株の購入及び、健常ボランティアからの樹立により入手した。尿細管間質病変を呈する遺伝性腎疾患の原因遺伝子であるNPHP1に変異を持つiPS細胞については、CRISPR-Cas9システムにより作製中で、PKD1/2についても同様に作製予定である。iPS細胞の樹立は、血液検体から分離した単核球に対し、センダイウイルスベクターを用いて初期化することで行った。また、これらのiPS細胞は、SIX2陽性ネフロン前駆細胞への高効率な分化誘導を介して、糸球体から尿細管まで連続したネフロンや間質組織を有する腎臓オルガノイドに分化誘導することにしており、その条件の微調整を行った。 また、以上の細胞には、レンチウイルスベクターによりI型コラーゲン/α-SMAプロモーターで蛍光発色するレポーターを組み込み、腎線維化の可視化をすることで、線維化の責任分子やmodifier geneのスクリーニング、薬剤の効果判定に応用する。これらのベクターは設計済みであり、作製が現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
○modifier gene候補スクリーニング: 尿細管間質病変進行、すなわちCKD進行の鍵となる責任分子や修飾遺伝子同定を目的としたforward geneticsを進める。具体的には、項目1で作製した健常者由来腎臓オルガノイド及び尿細管間質病変を起こす遺伝性腎疾患の患者由来腎臓オルガノイドに対し、約6000~19000種類の遺伝子を網羅するレンチウイルス型CRISPRライブラリを用いて、ランダムな遺伝子ノックアウトを誘導する。修飾遺伝子が遺伝子改変された細胞は、線維化の亢進により蛍光発色するため、FACS sortingで選別する。選別された細胞から改変された遺伝子を同定することで腎線維化に関わる新規分子候補を得る。遺伝子同定は、例えばCRISPRライブラリには各々のgRNAにタグがついており、PCRによってターゲット遺伝子を同定可能である。また、嚢胞形成が亢進した腎臓オルガノイドは肉眼で容易に識別可能であり、嚢胞壁の細胞を単離して解析することにより、同様に修飾遺伝子の同定を行う。 ○真のmodifier geneの同定: 前項で得られた候補遺伝子が尿細管間質病変進行に本当に関与するかを検討する。候補遺伝子をゲノム編集した疾患iPS細胞から腎臓オルガノイドを作成し、尿細管間質病変を再現できるか検証する。また、親が通常の嚢胞性腎疾患でありながら、子供が出生前や出生直後から重篤な多発腎嚢胞を呈する家系を集めてゲノム情報を解析することで浮上した候補遺伝子が既に複数あり、同時にこれらの遺伝子も検討する。
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