2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K17707
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北井 悠一朗 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (90839771)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近位尿細管 / 幹細胞 / 障害 / 修復 / 重症度 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性腎障害は、日単位で急激に腎機能低下をきたす病態であり、高齢化や慢性腎臓病の増加などを背景に近年その発症頻度は上昇している。急性腎障害を発症す るとその後慢性腎臓病や末期腎不全への進展の危険性が増加することが示されているが、急性腎障害の病態生理には不明な点が多い。 近位尿細管は急性腎障害の際に強く障害されるが、動物モデルでの検討により近位尿細管は障害後、近位尿細管上皮細胞自身が増殖することで修復を行うことが 示されてきた。しかし、この修復が特殊な細胞群の増殖によって行われるのか、あるいはあらゆる近位尿細管上皮細胞のランダムな増殖によって行われるのかは 不明である。近年、他臓器では、障害時の修復に関与する特殊な一群に関する研究結果が報告されてきているが、興味深い点は、障害度に応じて修復に関与する 細胞群が異なることである。肝臓や肺では軽度障害であれば、分化した細胞の増殖によって修復されるのが主体であるのに対して、重度障害であれば、特殊な細 胞群が主として増殖することが示されている。これらを踏まえ申請者は、腎臓でも重度障害の際に特殊な細胞群が主として増殖し、近位尿細管修復に関与してい るのではないかと仮説を立てた。軽度障害として30分間の虚血再灌流障害(30-min IRI)を惹起し、重度障害として60分間の虚血再灌流障害(60-min IRI)を惹 起した。軽度障害と比較して重度障害では、皮質表層の近位尿細管上皮細胞の強い増殖を認めた。重度障害で強い細胞増殖が起こることが示唆され、この細胞の 特性を明らかにすることを研究の目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最近、RUNX1のエンハンサー領域としてRUNX1+24mCNE (eR1)が同定され、造血幹細胞や異体部幹細胞を標識することが報告された(Ng CE, et al. Stem Cells 2010、Matsuo J, et al. Gastroenterology 2017)。eR1活性のレポーターマウスであるeR1-EGFPマウスを用いて検討すると、非障害腎や軽度障害が加えられた腎臓では近位尿細管上皮細胞にeR1活性の上昇はほとんど認めないのに対し、 重度障害では、皮質表層の近位尿細管上皮細胞の約20%に一連の連なりをもって強いeR1活性の上昇を認めた。 次に、重度障害後のeR1-CreERT2標識細胞で障害時や障害修復期の挙動を検討した。障害後にeR1で標識される細胞は、脱分化マーカーの発現が高く、障害後に強い増殖を示した。また、FACSでeR1-CreERT2標識細胞を回収し、どのような遺伝子プロファイルがあるかを評価した。その結果、eR1-CreERT2標識細胞は、近位尿細管上皮細胞すべてを標識するNdrg1-CreERT2標識細胞と比較して、細胞周期、DNA複製、蛋白合成に関する遺伝子の発現が高いことが分かった。また、eR1-CreERT2マウスと多色蛍光標識レポーターマウスR26-Confettiマウスを交配させ、障害時に一連の連なりをもって認めたeR1活性が上昇した細胞群が一細胞に由来するのかどうかを評価した。その結果、eR1-CreERT2標識細胞は、Ndrg1-CreERT2標識細胞と比較して、clonalな増殖をしていることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
近位尿細管で重度障害後にeR1で標識される細胞は、非常に強い増殖をしていることが示された。 今後、RUNX1発現の意義を検討するため、eR1-CreERT2マウスおよびNdrg1-CreERT2マウスとRUNX1 floxedマウスを交配させている。障害時にRUNX1が保護的に働くのか、あるいは障害を悪化させる方向に働くのかを検討する予定としている。
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