2019 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病患者におけるサルコペニア/フレイルの発症因子としてのADMA
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19K17718
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
若林 啓一 順天堂大学, 医学部, 助教 (60748565)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サルコペニア / フレイル / 慢性腎臓病 / 終末糖化産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(CKD)患者、特に透析患者ではサルコペニアの有病率が高い。CKD 患者のサルコペニアの原因には加齢に加え、慢性炎症、インスリン抵抗性、尿毒素などの関与が想定されている。Asymmetric dimethylarginine(ADMA)とともにCKDで蓄積する代表的な尿毒素の一つである終末糖化産物(AGE)は、CKDに関連した様々な合併症に関与することが報告されている。AGEは炎症を惹起することでインスリン抵抗性や内皮障害に関与すること、健常高齢者ではサルコペニア/フレイルとAGEに関連のあることが報告されている。そこで我々は、骨格筋に蓄積したAGEの、CKDに関連するサルコペニア/フレイルにおける役割について検討を行った。臨床研究では37名の維持血液透析患者を対象に、血清AGE値とフレイル、身体機能、身体活動状態との関連について検討を行った。動物実験ではCKDモデルである5/6腎摘マウスの腓腹筋にみられる形態学的異常、毛細血管数の減少、ミトコンドリア機能異常に対するAGEアプタマーの効果について検討を行った。維持血液透析患者では、フレイルを有する群でAGEが有意に高値であり、Time up and goテストのスコアおよび身体活動強度とAGEも有意な相関を示した。5/6腎摘CKDモデルマウスでは、本観察期間においては筋量の低下はみられなかったが、筋線維へのAGEの蓄積、筋線維の大小不同など、サルコペニアに特徴的な筋の形態学的変化が観察され、毛細血管数の減少、ミトコンドリア機能異常もみられたが、これらはAGEを特異的に阻害するAGEアプタマーの投与により、完全に改善がみられた。以上から、AGEは内皮障害やミトコンドリア機能異常を介してCKDのサルコペニア/ フレイルの発症に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、Asymmetric dimethylarginine(ADMA)に着目し検討をすすめていたが、そのなかで、ADMAを上昇させる主因として、終末糖化産物(AGE)の蓄積を見出せた。さらにはAGEとサルコペニア/フレイルにより深い関連があることが見出されたため、AGEに焦点を絞り現在まで検討を進めてきた。臨床研究、動物実験ともに、AGEはサルコペニア/フレイルの発症進展に密接に関与するという可能性が示唆されており、進捗状況としては概ね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はCKDのサルコペニア/フレイルにおける運動療法及びMyokineであるIrisinに着目し、その動態と治療目的としての可能性を探求していく予定である。実際に臨床研究の結果から、AGEと運動強度との関連が示唆されており、今後は動物実験での検討を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究費を効率的に使用したため、残額が生じた。次年度は、実験の遂行に加え、国内外の学会発表や論文投稿の機会を増やし、その費用に充てたいと考えている。
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Research Products
(1 results)