2019 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of mechnisms about regulation of blood pressure by phosporylated integrin in juxaglomerular apparatus
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19K17720
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
近藤 真澄 東海大学, 医学部, 助教 (60710275)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糖尿病性腎症 / 傍糸球体細胞 / インテグリン / レニン |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病性腎症(DN)の発症・進行には高血圧が深く関わっている。腎傍糸球体(JG)細胞におけるレニン分泌の調節機構としては腎交感神経や緻密斑からの各種分泌因子あるいはアンジオテンシンⅡなどの体液性因子など、JG細胞外部からの調節機構がよく知られているが、最も強力な調節機構であるJG細胞自身の圧受容体による調節機構に関しては未だ詳細は明らかになっていない。私たちは、腎傍糸球体装置において細胞接着因子であるインテグリンβ1がいくつかの特異的なリン酸化を受けていることを見出し、特にJG細胞に特異的なThreonine788/789部位のリン酸化がDNの進行に伴うレニン発現量の変化と負の相関関係を示すことから、インテグリンβ1のリン酸化がJG細胞の圧感知を制御してレニン産生を調節する可能性を考え、その機序を明らかにすることを目的として研究を行い以下の成果を得た。 1.DNの進行過程におけるインテグリンβ1 -Thr788/789部位のリン酸化とレニン発現および血圧との関係を、 Streptozotocin 投与により作製したDNラットを用いて定量化し、これらの負の相関を確認した。 2.インテグリンβ1とレニン産生の関係を明らかにするために、マウスJG細胞の株細胞As4.1に対しsiRNA導入によるインテグリンβ1のノックダウンを行ったところ、細胞のレニンmRNA量が半減し、インテグリンβ1がレニン産生の制御に関与していることが示された。 3.インテグリンβ1のリン酸化とレニン産生の関係を明らかにするために、As4.1細胞を用いてインテグリンβ1 -Thr788/789部位のリン酸化をPMAで促進、あるいはBIM-1で抑制したところ、レニン発現はリン酸化促進により減少し、リン酸化抑制により増大されることが明らかになり、インテグリンβ1のリン酸化がレニン発現を調節している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は傍糸球体装置での血圧の自己感知による調節機構を明らかにするもので、今年度においては特にJG細胞のレニン産生に及ぼすインテグリンβ1-Thr788/789部位のリン酸化の効果について調査を行い、(ⅰ)DNラットの血圧変化およびレニン発現とインテグリンβ1のThr788/789部位のリン酸化の間に負の相関があることを明らかし、(ⅱ)マウスJG細胞株のインテグリンβ1ノックダウンにより、レニン発現の約半分にインテグリンβ1が関与することを明らかにし、(ⅲ)マウスJG細胞株において、インテグリンβ1のリン酸化を促進するとレニン産生が減少し、リン酸化を抑制するとレニン産生が増加することを確認した。 以上の成果により、インテグリンβ1-Thr788/789部位のリン酸化が実際にJG細胞におけるレニン産生の調節を通して血圧を制御している可能性がほぼ確定され、次年度での機序解析へと進むことが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、JG装置構成細胞のインテグリンβ1のリン酸化を介した基質接着や細胞骨格の変化がDNの進行過程の血圧調節に関与する可能性に着目したものであり、本研究の成果は、これまでの各種の分泌因子による血圧制御の研究成果と合わせることで、腎臓の血圧調節機構の統合的な理解に寄与すると考えられる。 インテグリンβ1-Thr788/789のリン酸化は基質-細胞間の接着を弱めることが報告されており、これによる細胞張力の変化が圧受容器(baroreceptor)の感度を制御している可能性が考えられるので、今後、圧受容器の候補分子であるコネキシン40との関係を調査してレニン産生調節の機序を明らかにしたい。また、インテグリンβ1-Ser785のリン酸化は細胞骨格の再編集に必須であることが知られているので、緻密斑細胞の形態と膨圧の変化が輸入細動脈の血流量を調節している可能性についても検討したい。
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Causes of Carryover |
今年度末に予定されていた研究会が延期となったため今年度分の旅費の使用がなくなった。翌年度、状況が良くなり次第開催される予定であるのでその旅費として使用する。
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