2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K17726
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
角谷 裕之 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70509265)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腎間質線維化 / 内皮機能障害 / eNOS / 一酸化窒素(NO) / Wnt/β-catenin / sGC活性化薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、末期腎不全のfinal common pathwayである腎間質線維化進展機序において、内皮機能 (慢性腎臓病の基盤病態) とWnt/β-catenin経路 (臓器線維化シグナルとして重要) との相互作用について検討することである。 まず、Wnt/β-catenin経路活性化による腎線維化への内皮由来NOの影響についての検討(研究目的 1) であるが、仮説通り、野生型マウス (WTマウス) でWnt/β-catenin経路のみ活性化しても間質に線維化は生じなかったが、内皮機能障害(eNOSKOマウス、eNOS/NO経路の破綻)が存在することで著明な線維化を認めた。さらにWntの下流に存在するβ-cateninの発現量をWestern blot法で解析したところ、有意な上昇を認め、β-catenin下流のマーカーであるWisp-1、Cyclin-D1などの発現量はmRNAレベルで同様の傾向を呈していた。すなわち、eNOS/NO経路がWnt/β-catenin経路を抑制的に制御しており、eNOS/NO経路の破綻に伴い腎間質に線維化が生じていたことを証明することができた。 さらに、詳細に検討するため、マウス腎間質線維化モデルである片側尿管結紮(UUO)を作成し、同様に検討 (研究目的 2) をすすめた。WT-UUOマウスに比較してeNOSKO-UUOマウスでは、間質の線維化が顕著に増悪し、β-catenin及びβ-catenin下流のマーカーの発現量もWT-UUOマウスに比較して有意に上昇していた。さらに、sGC活性薬を投与すると、内皮機能障害存在下においても間質線維化を抑制できる可能性が示唆された。 現在、in vitro実験で研究目的 3を遂行中であり、同時に生体in vivo imagingにて傍尿細管毛細血管変化の観察(研究目的 4)を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては、以下の4つの研究方法に分けて詳細に分子機序を検討している。 (1)Wnt/β-catenin経路活性化による腎線維化への内皮由来NOの影響についての検討については、すでに成果を得ており、実験は終了している。 (2)腎間質線維化モデルを用いた腎線維化への内皮由来NOの影響についての検討についても研究データを取得しており、実験は終了している。 (3)eNOS/NO/PKG系活性化のβ-cateninに対する直接的な影響の検討については、現在、in vitro実験を遂行中であり、詳細な制御機構について検討中である。 (4)In vivo imaging技術を用いて腎間質線維化進展過程における傍尿細管毛細血管(PTC)の変化の観察については、(3)と同時並行で検討中であるが、モデルの特性上、明瞭に検出ができず、適宜調整を行いながら検討中である。 以上より、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究自体はおおむね順調に経過しており、現在のところ研究計画の変更は予定していない。しかし、研究目的(4)のin vivo imaging技術を用いて腎間質線維化進展過程における傍尿細管毛細血管(PTC)の変化の観察については、当初の想定とは異なり、テクニカルな問題で一定の成果をあげることができない可能性がある。その際には、計画の大幅な変更はないが、他の評価法を模索していく予定である。 一定の研究成果を得ることができたため、今後は、学会・研究会での発表を行い、同時に海外の科学雑誌への論文投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
マウスを使用した実験系において、本来使用予定であったマウスの購入、その後の繁殖に時間を要したため、一部のin vivo実験が遅延した。そのため、同実験で使用予定の抗体、ELISA等の購入費用が発生したため。 また、in vitro実験で、当初立ててた仮説通りに実験データを得ることができなかったため、その分子機序について再考し、別経路の検討を行っているため、引き続きin vitro実験を遂行するにあたり、使用する抗体購入費用も発生した。 学会・研究会での発表を予定していたが、発表に際し、必要な研究成果を得ることができなかったため、その学会・研究会の出張費が次年度へ移行したため。
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