2019 Fiscal Year Research-status Report
単クローン性免疫グロブリン惹起性腎障害の新規疾患概念:臨床病理像と発症機序
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19K17728
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
奈良 瑞穂 秋田大学, 医学部附属病院, 医員 (90769944)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 単クローン性免疫グロブリン / 腎疾患 / 臨床病理像 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.臨床病理学的検討 当科と関連病院における総腎生検数は1979年から2020年5月まで9502例にのぼる。うちMIDDは20例(LHCDD7例、HCDD5例、LCDD8例)、PGNMIDは13例、アミロイドーシス例は88例だった。特に報告数が少なく稀とされるMIDD、PGNMIDについて臨床データや病理学的特徴の解析を行っている。各々男女差・平均年齢・平均血清総蛋白量・血清アルブミン量・Cr値・尿蛋白量に有意差なく、M蛋白はPGNMIDが全例で陰性、その他は陽性例が3~5割程度認めた。治療はMIDDでは骨髄腫に準じた治療法が多く、PGNMIDではステロイド治療を主体とし、PGNMIDではステロイド反応性がよい症例が多く、腎予後はHCDDとPGNMIDで優れていた。治療内容やM蛋白の有無から、PGNMIDがMIDDとは臨床的に異なる特徴を持つ可能性が示唆された。また、病理学的にはLCHDDではIgG3-κが、LCDDでは7/8例がκ、1例のみλであり、軽鎖に関してはκ有意であることが示唆された。 2.患者尿からのM蛋白の精製と構造解析 (1)稀な病型である結晶性円柱腎症患者尿から、λ型M蛋白を精製し、N末端アミノ酸配列を同定した。次に、骨髄血からcDNAを調整し、このM蛋白の完全長cDNAをクローニングした。更に、尿から精製したλ型M蛋白を結晶化し、X線構造解析を行った。本腎症でのM蛋白の最初の立体構造解析例である。(2)尿中に多量のκ型M蛋白を認めながら腎障害の軽度な骨髄腫患者尿からM蛋白を精製し、N末端アミノ酸配列を同定した。次に、骨髄血からcDNAを調整し、このM蛋白の完全長cDNAをクローニングした。尿から精製したκ型M蛋白の至適結晶化条件を検討した。(3)稀な病型である軽鎖沈着症患者2例の尿からλ型M蛋白を精製し、疎水性の高い特徴があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、本研究課題と関連する腎症の臨床病理学的解析を進め、一部はすでに研究会に発表し投稿済である。現在さらについ追跡調査を行っている。更に、種々の病型を呈した患者尿からM蛋白を精製し、構造解析に進展があった。一報を論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べたように、本研究課題はおおむね順調に進展しており、今後も症例数を増やした検討を進める。得られた研究成果をまとめ、研究発表も行う。
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Causes of Carryover |
昨年度に研究対象とした患者の尿中M蛋白は、特徴的な生化学的特性を有していたことから、精製と構造解析が比較的容易であった。精製に必要な単体や、構造解析に必要な試薬の使用量が、想定していた量よりも少なかった。生じた次年度使用額分は、今年度に追加検討する患者尿のM蛋白の解析費用と、研究発表(国際専門誌に論文投稿中)の費用に充当する。
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