2019 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性腎臓病における近位尿細管PHD-HIF経路の役割を解明する
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19K17731
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 真衣 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (80837005)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 糖尿病性腎臓病 / hypoxia-inducible factor / PHD阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、BTBR ob/obマウス(肥満・2型糖尿病モデルマウス)に18週間PHD阻害薬を投与すると、アルブミン尿が減少し、糸球体上皮細胞と内皮細胞障害が軽減することを明らかにした。単離糸球体における遺伝子発現の網羅的解析を行ったところ、PHD阻害薬投与群では、BTBR ob/obマウスで見られるMCP-1発現増加が抑制されていた。実際に、PHD阻害薬投与群では尿中MCP-1と糸球体へのマクロファージ浸潤が減少していた。培養マウス・メサンギウム細胞での検討により、PHD阻害薬がパルミチン酸刺激によるMCP-1産生を抑制することが明らかとなり、PHD阻害薬の腎保護効果の一部は、腎臓における直接的なHIF活性化によるものと考えられた。 しかし、PHD阻害薬には肥満および血糖・脂質代謝改善作用もあり、上記モデルではこれら代謝改善の影響と、腎臓におけるHIF活性化の影響を個別に検証することは困難だった。そのため、腎特異的にPHDを欠損したマウスに糖尿病を発症させ、同様の腎症改善効果が得られるか検証したいと考えた。腎臓においては、特に尿細管におけるHIFのはたらきが重要視されているため、タモキシフェン誘導型CreERシステムを用いた近位尿細管特異的PHDノックアウトマウスを作成した。タモキシフェン投与により、これらのマウスでは腎臓においてPHD1・2・3の発現が低下することをreal time-PCR法で確認し、免疫染色法により尿細管でのHIF-1αの集積を確認した。さらに、体重、血圧、腎機能、アルブミン尿、腎組織像などの基礎的なデータを収集した。今後はCre(-)マウスとCre(+)マウスにストレプトゾトシンを投与して糖尿病を発症させ、腎症への影響を検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、上記に述べた研究実績を論文にまとめて発表した。また、近位尿細管特異的HIF活性化が糖尿病性腎臓病の進展に与える影響を検討するため、タモキシフェン誘導型CreERシステムを用いたノックアウトマウスを作成しており、今後はこの系を用いて研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
タモキシフェン誘導型CreERシステムを用いた近位尿細管特異的PHDノックアウトマウスにストレプトゾトシンを投与し、近位尿細管でのHIF活性化が糖尿病性腎臓病の進展に与える影響について検証する。
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