2020 Fiscal Year Research-status Report
ケトン体であるβヒドロキシ酪酸を利用した慢性腎臓病の新規治療の開発
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19K17735
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
小林 麻美子 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (30791991)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | βヒドロキシ酪酸 / シスプラチン腎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト培養腎尿細管上皮細胞(HRCE)においてケトン体であるβOHBによる腎保護作用の分子機序の解明を行っている.腎障害モデルを示すcisplatin腎症モデルにおいてβOHBはcleaved caspase3の発現を抑制し,cisplatin誘導性アポトーシスを抑制することを確認している.令和元年度,βOHBの細胞保護効果の機序への関与として細胞内ATP濃度の変化に着目し,細胞内ATP濃度がβOHB単独投与で上昇し,cisplatin投与下で低下した細胞内ATP濃度はβOHBにより上昇することを確認した.アポトーシスに対する細胞保護効果に関して,生存シグナル伝達経路としてAktのリン酸化亢進が重要であることが知られている.我々は以前Aktのリン酸化がβOHBの細胞保護効果に関与している可能性を考え,ウェスタンブロット法でAktのリン酸化を確認した結果,cisplatin単独投与と比較してcisplatinとβOHBの24時間共添加では有意に亢進することが分かった.そこでHRCEにおいて,βOHBのAktのリン酸化とアポトーシス抑制作用の関連を検討するため,AktのsiRNA条件下でのcisplatin誘導性cleaved caspase3の発現をウェスタンブロット法で確認した.siRNAを用いたAktのノックダウンを行った条件下では,cisplatinとβOHBの共添加を行っても,cisplatin単独投与と比較しcleaved caspase3の発現抑制はみられず,βOHBのcisplatin誘導性cleaved caspase3の発現抑制作用は解除された.これよりβOHBはcisplatin誘導性腎尿細管細胞アポトーシスを抑制するが,その機序としてβOHBによるAktのリン酸化亢進が細胞保護効果に関連している可能性が考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト培養腎尿細管上皮細胞においてはβOHBによる細胞保護効果に対して,一つの経路として生存シグナル伝達経路であるAktの関連を見出すことができた.しかし当初予定していた腎障害モデルマウスを用いた実験に着手できなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト培養腎尿細管上皮細胞においてAkt以外の経路の関連の有無に関して探求する予定である.
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Causes of Carryover |
当初予定していた腎障害モデルマウスを用いた実験に着手できなかったので次年度使用額が生じた.
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