2019 Fiscal Year Research-status Report
腎尿細管における糖新生とオートファジー不全の関わり
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19K17741
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
酒井 晋介 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60817360)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オートファジー / 糖新生 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、尿細管におけるオートファジーと糖新生の関連を明らかにすることで、将来的には糖尿病でのオートファジー不全を解消し、過剰な腎糖新生を抑制することによって糖尿病性腎症や高血糖を改善する薬剤の開発への道筋をつけること目的としている。近位尿細管特異的オートファジー不全マウス(KOマウス)では、糖尿病モデル(高脂肪食負荷)において、糖負荷試験により高血糖が遷延しやすい一方で、インスリン負荷試験では、全身インスリン感受性に相違がみられず、腎以外の糖代謝関連臓器に代謝の著明な違いがみられない事を見出した。そのため、糖負荷試験の相違を生み出す理由のひとつとして、腎糖新生の評価を行ったところ、糖新生律速酵素であるフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ1やグルコース-6-ホスファターゼのRNA発現や一部の酵素活性がKOマウスHFDモデルにおいて亢進することが明らかになった。そのため、オートファジー不全が直接糖新生因子の発現制御に関わっている可能性を考え、遺伝的オートファジー不全マウスよりオートファジー不全尿細管細胞(初代培養細胞)を単離し、それらの細胞での糖産生能を評価したが、必ずしも糖産生能が亢進しないことが確認された。以上の結果から、オートファジー不全細胞が液性因子を介した細胞間シグナルにより、二次的に糖産生を亢進させている可能性が考えられたため、KOマウスの腎臓で増加している代謝産物の同定を試みており、代謝産物依存性に糖産生が亢進されているかどうか、また糖新生因子の転写を制御するかどうかを現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスを用いた検討では、仮説に従った結果が散見されており、オートファジー不全状態が、直接糖新生因子の発現制御に関わっている可能性が考えられたが、オートファジー不全単離尿細管細胞(初代培養細胞)での糖産生能の評価では、その仮説に一致せず、必ずしも糖産生能および糖新生因子の亢進がみられないことが明らかになった。 そのため、直接的な要因ではなく二次的な要因について新たに検討を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、オートファジー不全状態が、直接糖新生因子の発現制御に関わっている可能性を考えたが、オートファジー不全単離尿細管細胞(初代培養細胞)での糖産生能の評価では、必ずしも糖産生能および糖新生因子の亢進がみられないことが明らかになった。 そのため、オートファジー不全による液性因子を介した細胞間シグナルが、二次的に糖産生を亢進させている可能性を考えており、現在その液性因子(代謝産物を考えている)の同定を試みている。おおよその見当がついた段階で、それらの液性因子が濃度依存性に糖産生を亢進するかどうか、また糖新生因子の転写を制御するかどうか、またオートファジー不全部位から野生型部位へのとりこみ移動が行われるか、を検討する予定である。
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