2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞老化とオートファジーに介入する慢性腎臓病の治療法開発
Project/Area Number |
19K17745
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
岸 誠司 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (10519507)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 線維化 / DNA損傷応答 / AKI to CKD transition |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞老化とはヒト正常2倍体線維芽細胞の分裂疲弊によりもたらされる非可逆性の細胞周期の停止で,テロメアの短縮とそれにともなう持続性のDNA傷害によるものとされる.これと同様の表現型はDNA傷害によっても急性にひき起こされることがわかっており、腎臓の近位尿細管でも起こりうる。本来細胞老化はがん化の抑制に重要な防御機構として知られているが、腎臓病との関係は明らかでない部分が多い。今回我々はDNA障害と細胞老化時に誘導されるmTOR-オートファジー共存コンパートメント(TASCC:mTORおよびオートリソソームの集積する境界の明瞭な細胞内領域)に注目し、急性腎障害が慢性腎臓病に移行する(AKI to CKD transition)メカニズム解明を進めた。 多能性幹細胞由来の腎臓オルガノイド(Nat Biotechnol. 2015 Nov;33(11):1193-200.)にシスプラチン投与して近位尿細管にDNA障害を惹起した。ATR阻害薬の存在下ではDNA障害が増幅しており、G2/Marrestも増加していることを明らかにした。さらに、TASCC形成を定量評価したDNA障害に続いて増加していることを認めた。 AKI to CKD transitionのモデル動物で、尿細管のTASCC形成は増加していた。さらに、 DNA損傷応答を制御するキナーゼであるATM and RAD3-related (ATR)の近位尿細管特異的ノックアウトマウス(近位尿細管でのDNA損傷応答機構が障害されたマウス)に片側尿管結紮(UUO)を行いその腎臓を解析し、尿細管でのTASCCの形成が増加していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TASCC形成とDNA損傷応答機構が直接関係していることをマウスモデルを用いて実際に証明できたため、本研究は順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
TASCC形成と腎臓病の関係の評価をさらに進める。特に全身疾患に関連した疾患についての評価を進める。対象としては、わが国でも腎代替療法の原疾患として重要な増加糖尿病性腎臓病および高齢化に伴ってその頻度が増加している腎硬化症を主たる標的として、その評価をマウスモデルやヒト検体の評価によって進める予定である。さらに既存の治療介入でもTASCCが減少しているのかの評価を進めていくこととする。
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Causes of Carryover |
試薬の購入のみに研究費を使用し、比較的高額の実験キットの購入を行わなかったため、多額の費用を必要としなかった。本年度はシングルセルRNA解析のためのキット購入の予定があり、さらに凍結胚にて導入したマウスを実験に追加、維持するための費用とする。
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Research Products
(3 results)